都政改革本部内部統制プロジェクトチーム  入札契約制度に関する有識者との意見交換会議事録

平成29年3月30日(木曜)
都庁第一本庁舎7階中会議室

10時00分開会

 1.開会
○事務局 ただいまより都政改革本部主催の入札契約制度に関する有識者との意見交換会を開会いたします。
 私は、本日の議事進行を務めます、事務局の池上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 議事に入る前に、2点、事務的なご連絡を申し上げます。まず、この会議の様子につきましては、最初から最後までプレス公開するとともに、インターネット中継を行います。
 続いて、本日の資料についてですが、机上に配付しておりますので、ご確認をお願いいたします。全部で6点ありまして、上から1、式次第、2、出席者一覧、3、座席表、4、開催趣旨に関する資料、5、楠教授からの資料、6、有川教授の資料でございます。不足などございましたら事務局までお声がけください。
 それでは、本日の開催趣旨についてご説明申し上げます。都民ファースト、情報公開、税金の有効活用(ワイズスペンディング)という都政改革の三つの原則を推進するため、昨年9月に都政改革本部が発足し、このうち特にワイズスペンディングを推進するため、本部内の内部統制プロジェクトチームにおいて入札契約制度改革に取り組むことといたしました。以来、プロジェクトチームでは、現行の都の入札契約制度の現状分析や豊洲新市場、オリンピック施設などのケーススタディーを進め、昨年12月22日の第5回都政改革本部会議におきまして、お手元の資料1の1ページにありますとおり、予定価格の公表時期、一者入札の回避策、最低制限価格制度と低入札価格調査制度、総合評価方式、調達全般にわたるチェック体制という五つの課題について今後の改革の方向性を示したところでございます。この方向に沿って現在、財務局と特別顧問協働で改革案の検討が進められているところですが、入札契約制度にはさまざまな方法があり、それぞれにメリット、デメリットがありますので、幅広くご意見を伺い、より多くの方が納得できる制度を構築していくことが重要でございます。
 そこで、国や他団体の入札契約制度に精通されていらっしゃるお二人の教授をお招きし、東京都の入札契約をめぐる課題についてご意見を伺うことにより今後のよりよい制度構築に結びつけていくため、本日の会を開催することといたしました。積極的に意見交換が行われ、有益なものになればと考えておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、お招きしております2名の方をご紹介したいと思います。
 日本大学総合科学研究所教授の有川博様でございます。

○有川教授 有川です。よろしくお願いいたします。

○事務局 上智大学法科大学院教授の楠茂樹様でございます。

○楠教授 楠です。よろしくお願いします。

○事務局 どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、内部統制プロジェクトメンバーを順に紹介しますので、その場でご起立の上、一礼のほどお願いいたします。
 まず、特別顧問ですが、飯塚正史特別顧問でございます。

○飯塚特別顧問 飯塚です。よろしくお願いします。

○事務局 宇田左近特別顧問でございます。

○宇田特別顧問 宇田でございます。よろしくお願いします。

○事務局 加毛修特別顧問でございます。

○加毛特別顧問 加毛でございます。よろしくお願いします。

○事務局 坂根義範特別顧問でございます。

○坂根特別顧問 坂根でございます。よろしくお願いします。

○事務局 須田徹特別顧問でございます。

○須田特別顧問 須田でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 小池達子特別調査員です。

○小池特別調査員 小池でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 次に、東京都財務局の職員でございます。
 十河慎一経理部長でございます。

○十河財務局経理部長 十河でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 五十嵐律契約調整担当部長でございます。

○五十嵐財務局契約調整担当部長 よろしくお願いします。

○事務局 小出真志経理部契約調整担当課長でございます。

○小出財務局経理部契約調整担当課長 小出でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 猪又謙経理部契約調整技術担当課長でございます。

○猪又財務局経理部契約調整技術担当課長 よろしくお願いします。

○事務局 中満正志経理部契約第一課長でございます。

○中満財務局経理部契約第一課長 中満でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 皆様どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、意見交換に先立って、加毛特別顧問より一言お願いいたします。

○加毛特別顧問 きょうはお忙しいところ、両先生にご参上いただきまして、本当にありがとうございます。
 簡単な経緯を私のほうから説明させていただきます。
 我々は、去年の9月から内部統制プロジェクトチームを組織し、主に公共建設入札手続について、いろんな観点から事実関係を調査いたしました。その結果、さまざまな改革をする必要があるとの結論になりました。
 その経緯で、例えば代表的な例として、豊洲3施設の入札手続問題がございます。ご存じのように、これは三つの施設について入札公告をしたんですけれども、一つの施設に各JVが一つのグループ、いわゆる一者入札で、合計3者が3施設に入札手続に参加しました。そして、第1回入札のときには各者とも辞退してしまい、辞退を理由に第1回目の入札手続は不調になりました。そして翌日、東京都の担当者がJVの代表幹事社の各担当者の方々からヒアリングをいたしまして、例えば再入札をした場合に再入札に応じるかどうかなど、いろいろな質問をしています。そういう中において、結論から言いますと、再入札手続においても同じJVが同じ施設の入札手続に参加し、そしていわゆる一者入札となり、事前に入札価格が公表されておりました。そして、3か月間ぐらいの間に、実質的に入札価格が約1.9倍になり大幅に上がってしまい、その積算価格の算出についてもよくわからないという状況でした。そして、結論としては、マスコミでも報道されているように99.7%から99.9%、こういうふうな落札率で落札されました。平たく言えば、再入札のときに入札価格が事前に公表され、自分のところしか入札に応じないだろうと、他社は入札しないだろうと、そういうことがそれだけわかっていれば、もう100%近い価格で入札手続に参加する、そういうことは当然考えられることであったと思われます。
 そういう手続の中において、やはり東京都の入札手続を全面的に改革する必要があるのではないかと、そういうことを一つの契機といたしまして、担当の財務局をはじめとして関係当局とこの問題について検討し、一定の方向性の改革案をまとめていくと、そういうふうに考えておりますので、きょう最終的に両先生のご意見を伺って、その方向性を定めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○事務局 それでは、プレスの方にご連絡いたしますけれども、頭取りのみのプレスの方は、こちらで退席をしていただければと思います。
 それでは、意見交換に移りたいと思います。
 まず、有識者の先生方から、先ほど申し上げました五つの課題についてご意見を賜れればと思います。
 まず、楠教授、どうぞよろしくお願いいたします。

 2.楠教授から説明
○楠教授 上智大学の楠と申します。よろしくお願いいたします。座ったまま報告させていただきます。
 私の専門は経済法という分野で、具体的には独占禁止法になります。独占禁止法は、皆さんご案内のとおり、談合という問題が主たる独占禁止法違反としてありますけども、その談合防止という観点から公共調達の制度というものを考えるというアプローチで、もともと公共調達の制度について研究してまいりました。今回の私の報告は、独占禁止法についても少し話しますけども、主として今回の課題である入札契約制度について、その見直しの方向性等についてコメントさせていただくということになります。
 まず初めにですが、課題、繰り返しますけども、東京都の入札契約制度及びその運用にかかわる問題意識、考察、解決の方向性についてのコメントをするということ、それから、内部統制PTにおいて、いろいろ議論されているわけですけども、そこで課題として提示された、今回五つの課題とありましたけども、それに付加して、少しだけ私の設定した課題についてもお話しさせていただきたい。3番目として、ここに便益と費用と書いてありますけども、さまざまな制度はいい面と悪い面、あるいはメリット、デメリットあると思うんですね。パーフェクトな制度ってなかなかないので、どういう制度を選択するにしても、やはり留意点というのが残るということについて、便益費用についてお話しさせていただくと。ただ、私、経済学者じゃありませんので、余りテクニカルな議論にはなりませんので、その点はご留意ください。そういった意味で、その4番目の一長一短の認識について提示させていただくということになります。
 まず初めに、予定価格の公表時期の問題です。皆さんご案内のとおり、国においては、予定価格というものは事後公表になっています。というのは、法令上の制約があるからです。ただ、地方自治法においてはそういった制約がありませんので、地方公共団体においては事前公表のところ、事後公表のところがあるということが前提になります。
 先ほど加毛先生からの問題意識がありましたけども、要は、事前公表になってしまうと、100%ぴったりのケースが出てきて、それは、そもそも競争としておかしいんじゃないかというふうな認識がなされましたけども、それはそのとおりです。事前公表で、かつ構造的な一者応札の場合は、当然一番高い値段を入れてきますので、100%になるということが問題になります。
 ただ、では、落札率というものが事前公表から事後公表になったときに大幅に低下するかといったことについては、それほど変わらないのかなという認識を持っています。私のかかわった自治体、委員としてかかわった自治体で、事前公表から事後公表に切りかえた自治体があります。ほんのわずかですけども、落札率が下がるんですね。それはぴったりというケースがなくなるから、必然的に0.何ポイントか下がるんですけども、5%、10%下がるかというと、そういうことはないということですね。というのは、そもそも競争がない状態なわけですから、一者応札の場合は、結局は高い値段を入れてくるわけですね。なので、100%というのはなくなるけども、高い値段であることには変わりないということで、事後公表にしたら大幅に落札率が低下するということは、少し期待できないのかなと。
 むしろ、懸念しなきゃいけないものは何かというと、不落なんですね。要は、事前公表していれば、不落というのはほぼない。というのは、100%の価格はわかっていますので、101%とかじゃないわけですね、応札価格が。ただ、わからない場合には高い値段を入れてくる可能性がありますので、一者応札の場合は、予定価格がはっきりわからなければ、保険を掛けて高い値を入れてくるだろうと。となると、不落になる。不落を繰り返して不落随契になるということも予想されるわけですね。となると、結果的には余り変わらないというか、時間だけがかかるという、そういったケースも想定されるんですね。ですので、事後公表にするときには、そういった不落の問題をどういうふうに扱うのか、再度入札の場合どう扱うのかあたりも検討というものをしなきゃいけないことになります。
 あとは、一番下に書きましたけども、国の方針に合わせるという、誤解と書きましたが、ちょっと語弊があるかもしれませんけども、国はさまざまな指針を出していますけども、後で有川先生からお話があるかもしれませんけども、要は事後公表を推奨するわけです。事後公表を推奨する理由として、大きくは二つあるんです。一つが、値段が高どまりするという問題、もう一つが、下に張りつくという問題なんです。競争がない状態であれば高どまりする、競争が激しい状態であれば、最低制限価格に張りついてしまって、事前公表であれば、一定の計算式によって最低制限価格もわかる。となると、多くの業者が最低制限価格ぴったりで入れてくる、そうするとくじになる。それは、くじというのは、そもそも競争ではないでしょうという問題意識なんです。今、東京都が抱えている問題というのは、どちらかというと上に張りつく問題ですから、国がずっと言ってきた下に張りつく問題というのは、ここでは検討する、例えば、設計コンサルなんかはまだ値段が安い状態ですので、そういった議論をしなきゃいけないと思うんですけども、今、問題意識として共有されているものは上のほうだと思うので、そういった上のほうについての議論をしなきゃいけないことになります。先ほど言ったように、一者応札の場合はぴったり張りつくんですけども、必ずしも大幅な落札率の低下が期待できるとは限らないということ。
 それから、よく公取的な問題意識を持つと、問題意識で考えると、談合を誘発するという議論があるんです。つまり、100%ぴったりの価格がわかると、業者はその100%というものを目安にして談合の価格調整をしてくると、これは非常に説得力のある議論になります。ただ、今、談合のあり方として、一者応札によって談合するというケースもあるんですね。つまり、全者が辞退するとか、応札しない、一者だけが入るという形の談合された場合には、結果的には一者応札と同じ議論になるわけです。そうすると、談合がしやすくなるか、しやすくならないかというのは、なかなか議論ができないということになります。
 事後公表に変えたときの一番大きな課題というのは、情報漏えいだと思うんです。ここに書きましたけども、今月、産経新聞にいろいろ、東京都は情報漏えいの疑いがあると書かれていて、事前公表なんだけども、それでも情報漏えいされるものがあるということでいろいろ書かれたわけです。東京都の場合は、発注件数が非常に多いんですよ、発注規模も大きいです。ですので、ほかの自治体と比べてそういった問題が生じる可能性が高いということは、やはり重々認識しなきゃいけないわけです。そういったものというものも考慮して、情報漏えいの問題というものを厳格に、シビアに考えていかなきゃいけない。
 官製談合防止法と書きましたけども、情報漏えいというのは、これ官製談合防止法違反です。今は非常に厳しくなっているんです。官製談合防止法も、昔は贈収賄が絡むと懲役刑、執行猶予はつきますけども懲役刑だったんですが、今は贈収賄がかかわらないものも執行猶予なし、ごめんなさい、懲役刑ですね、罰金ではなくて懲役刑というものが課される傾向があるんです、非常に官製談合防止法も厳しくなっているということを認識しなきゃいけないわけです。
 もう一つは、予定価格の上限を聞き出そうとしているのか、下限を聞き出そうとしているのかということも、やはり考慮して情報漏えいのリスクを考えなきゃいけないことなんです。
 やはり問題になるのは、コンプライアンスのあり方ということなんですけども、研修をすればいいのかとか、あるいはマニュアルをつくればいいのかとか、あるいは内部通報を充実させればいいのかって、いろいろ議論があるんです。ただ、なかなかどの自治体もそれは悩んで、なかなか決定打、決定的な処方箋というものを見出せない状態にある。東京都はそういった大きな発注件数、大きな規模、そういった状況の中でどういうふうに対応しているのか、いくのかということがやはり課題になるだろうということです。
 このページの最後に強調しておきたいことは、事後公表に一回切りかえたと、で、情報漏えいの問題が出てきたと、だから事前公表に戻しますということはやめていただきたいんです。制度をコロコロ変えるのは、都民の信頼を裏切ります。ですので、一度変えた以上は、それはずっとコミットメントをし続ける必要がある。それだけにきちんとした情報の管理の問題というものを考えていかなきゃいけない、そういうふうに思います。
 次に、一者応札です。一者応札に関しては、これはもうどの発注機関も全く同じ問題を抱えています。我々が分けなければいけないというか、見分けなければいけないのは、それが構造的に一者応札になりやすいものなのか、それとも発注者が恣意的に入札参加資格等を操作することによって一者応札にしているのか、あるいは需給バランスの結果、1者になってしまっているのか。あるいは、実は競争が機能しているんだけども、予定価格、事前公表しなくてもある程度は推測がつきますから、この額ではやっていけないということで、多くの企業が結局それに参入せず、1者だけがそれに参入したというケースは、これ競争的なケースでもあるわけですよね。あるいは、実はその予定価格の範囲内だったら利益は出るんだけど、この業者が安く入れてくるに違いないと思っていた場合には、ほかはもう入らないわけですよ。そういったケースというのは、競争的なんだけど一者応札なんです。ですので、どういうふうなシナリオで1者になっているかについて、きちんと分けないと、対応策も打てないわけです。ですので、まずそれを見分けることだと思います。
 これはなかなか難しくて、一件一件入札参加資格とかを丁寧に見ていかないと、それが何なのかということはわからない。特に、10年ほど前はダンピングというのをよく言われたんですね、公共工事では。ちょうど公共工事品確法ができ、2005年前後というのはダンピングの問題よく言われたんですが、今は、この四、五年ですか、どちらかというと需給バランス変わって、上のほうに張りつくという問題がよく出てきているんです。ですので、そういった市況の変化というものも踏まえながら、一者応札の問題について分析していく必要があると。
 もし構造的に、例えば、ここに書きましたけども、システム調達とメンテナンスのように、ある業者がシステムをもう組んでしまったと、コンピューターシステムですね、ネットワークのシステム。それをメンテナンスするときに、ほかの業者が大体入ってこないんです。物理的に入ってこられないわけではないんですけども、そもそも不利だと思っているから入ってこないわけです。こういった構造的な一者応札の場合に、じゃあメンテナンスを入札しましょうといっても、結果的には一者応札になる傾向が非常に強いんですよ。そういった場合、どうすればいいのかなんですね。(1)のように、そもそもそういう構造をつくらないというのが一つの手だと思います。例えば、システムの構築とメンテナンスをセットで発注するとか、そこで競争させるとかいうのも手でしょうし、もしそれができないんだったら、これはもう堂々と随契をやるしかないと思うんですね。ただ、随契の場合は法令上の制約がありますから、そこを見分けなきゃいけないという問題になります。一つの解決策とすれば、随契を考えるんだけども、とりあえず誰がやるのかということで手を挙げさせて、もし今の既存の業者以外が手を挙げるのであれば入札、そうでなければ随契という段階的な方法というのもあり得るかと思います。
 次のページですけども、一者を二者以上にする方策とその帰結について、一個一個見ていきたいと思います。入札参加資格を緩和するというのは一つの手です。ただ、そうすると望ましくない業者が入ってくるんじゃないかという問題が出てきます。スペックを緩和したり、発注内容を見直して二者以上が入りやすいようにするといった場合には、そもそも調達内容が変わるわけですね。なので、一者だった場合と二者だった場合にどうやって比較するのかという問題が出てくるわけです。恐らく二者以上入札に参加すれば、落札率が低下します。そういったデータもありますよね。だけども、そもそもの調達内容が変わってしまえば、比較しようがないということになりますよね、その問題をどう扱うか。公告期間とか工期を延長する、それによって参入を促進させると。ただ、当然時間的な問題が出てきますから、時間がかかるものは、果たしてワイズスペンディングになるのかといった課題が出てくると思います。
 考えなければいけないものは、二者以上を目指す結果、得られるかもしれない落札率の低下、対、そのために生じるだろう他の帰結との比較になるわけですよね。私が言える立場じゃないかもしれませんが、ワイズスペンディングというのであれば、予想される効果の総合的な比較というものが必要だろうと。つまり、不確実な部分をどうやって見分けるかなんですよね、これが難しいということになります。
 一者応札を無効にしようといった議論があります。それは一理があるんですね。そうすれば一者応札というものを回避できる、これはもう非常に効果的です。ただ、その場合、やはり懸念すべき点というのがある。一者応札を無効にして、もう一回入札をすると、そうすると再度入札になります。一者応札を二度目に、二者以上の応札というものを目指すために、さまざまな調達内容も変えるかもしれませんけど、まず時間がかかるわけですね、その時間というものをどういうふうに評価するのかということ。この時間的な問題というのは、なかなか公共調達では議論されにくいところなんですね。ただ非常に大事な話ですよね。インフラ整備を行う公共工事において、時間的な要素というのは非常に大事だという認識は持つべきだと。再度入札した場合に、これは非常に懸念されることなんですけれども、今度は入ってこないと。つまり、再度入札で不調になる可能性もあるんですね。なぜならば、それは民間の受注が入りました、ほかの発注者で受注が入りました、技術者が間に合いませんと、配置ができませんとなったらどうするのかなんです。そうやって再度入札における不調の問題もリスクとしてはあると。
 ここに書きませんでしたけども、こういった一者応札を無効にするという実務をとった場合には、当初の入札でも不調になる可能性があるわけです。なぜならば、そういった不確実なものでやりたくないと。受注者からすれば、契約は自由ですから、応札も自由ですから、不確実でリスクがある契約には入りたくないといった懸念もないわけではないということになります。先ほど申し上げた競争条件を変更してしまえば、中身が変わってしまうだろうから、その部分もカウントも必要だと。仮に予定価格を引き上げると、それによって参入を促進しましょうといったら、もう予定価格を引き上げたこと自体の説明責任になるわけですね。仮に落札率が下がっても、それは意味のある落札率の低下なのかって話なんですね。ただ、応札者はふえるので、競争に対する評価というのはしやすくなる、これは事実です。
 あともう一つ、非常に懸念されるのが、ダミー応札なんですね。結局その一者応札を回避したい発注者は、いわゆる声がけをして入ってくれませんかと、とりあえず形でもいいから入ってくれませんかと、もしやってしまうと、官製談合防止法を問われる可能性があります。非常に危険です。そこで何か癒着があるんじゃないかとか不正があるんじゃないかって言われる可能性があるわけですね。
 あともう一つ、書きませんでしたけど、仮に一者応札で落札率が80%だった場合、どうするかなんです。これ競争的じゃないですか。もちろん80%が競争的かどうかというのは評価の仕方だと思うんですけども、もし仮に非常に競争的な値段がついたといった場合に、これはどうするんですかという。それでは、じゃあ90%以下は有効にするんだけど、90%以上を無効にするとか、そういうふうな線引きをするんですかといったあたりで、具体的に実務としていろんな課題が出てくるとは思うんですね。ですので、そういった案自体は尊重しますし、非常に傾聴に値すると思うんですけども、もしそういうことをされるのであれば、試行的にされてみて、本格運用に結びつけていくと、さまざまな課題があれば、そこで立ちどまって、いろいろ検討して試行錯誤していくと。もう試行錯誤のプロセスだと思うんですね、これを試行錯誤せずにいきなりどおんとやってしまって、またうまくいかなかったら戻すなんてことは、絶対やってはいけないというふうに思います。
 次なんですが、10ページの最低制限価格です。最低制限価格に関しては、これ原則論は、実際には下限価格を設けるべきじゃないんですね。つまり、競争的な価格というのが適正な価格なんです。ですから、業者がそれでやると、その発注者がそれでいいと思えば、その価格が適正なんです。ですので、法の原則はそもそも下限を設けない、これは確認しとかなきゃいけないですね。ただ、公共工事においては、当たり前のように下限という話になるんですね。それは、公共工事品確法って2005年にできたその法律の趣旨もあるのかもしれませんけども、やはり値段が安過ぎると、安過ぎるということが背景になって、質の低下にもつながるんじゃないかという懸念があるから下限という議論になるんですね。その下限の議論で、原則はいわゆる低入札調査基準価格を設定して調査をするというものです。本当にこの額でできるんですかということを調査して、できると判断すれば合格、無理だと判断すれば不合格ということで、次にその業者と契約するかどうかを決めるわけですね。その例外として最低制限価格ってあるわけですね。
 何で最低制限価格のような、一つの一定の価格で、あとは絶対に無効にしてしまう、失格にしてしまうかというと、それは行政側のコストの問題なんですね。例えば、ダンピング状態を考えたときに、もうそこらじゅうで値段が下がってしまって、そこらじゅうで下限を割ってしまうと、全部低入札調査をやるんですかとなってしまうと、例えば、東京都ですと5,000件ぐらいあるんですか、公共工事、500件、低入にひっかかりましたと、500件やるんですかとなると、もたないわけですよね。そうすると、ある一定の合理的だと思われた価格でその下限を切って、そこでもう失格にしてしまうという実務が、コスト的には非常に合理的だって判断になるわけですね。
 ただ、この場合というのは前提があって、ダンピングの状態が定常化しているというか恒常化している状態なんですよ。今まで、先ほど申し上げましたけども、2005年前後はダンピングが非常に激しかった。2011年、震災とかそのぐらいまではダンピングの状態、非常に激しかったんですね。ちょうど震災復興とかオリンピック景気とかいったことで需給バランスが変わったと言われています。もちろん民間需要の話もあると思うんですけども、今は設計コンサルは結構ひどいダンピングはあると思うんですけども、いわゆる施工工事に関しては、比較的上に張りついているって状態なんですよね。そうすると、今まで東京都がやってきたような、いわゆるそのWTO以外は全部最低価格というのは、ちょっともう状況は変わってきているんじゃないかというふうに思います。ですので、もちろんこれケース・バイ・ケースで、ものによって変わってくると思うんですね、先ほど申し上げたように、設計コンサルなんかは普通の施工とはまた別の状況かもしれません。が、やはり、今の状況を考えると、原則どおり、低入が原則、最低制限価格が例外という扱いをするのが妥当な実務だというふうに考えます。
 次ですけども、次のページ、なかなか難しいのが、やはり行政のコストというものをどう評価するのかって難しくて、どうしても行政のコストはゼロだと考えやすいんですよ。時間的なコストもゼロだと考えやすいんですね。ただ、これ機会費用を考えたときに、行政がそういった低入という問題に忙殺されてほかの業務がとまってしまうと、これインフラ整備としては非常に致命的なことになります。ですので、そういった行政コストも考慮しなきゃいけない。ただ、それに甘えて、忙しいから勘弁してくださいというふうなエクスキューズに甘えるのもまた問題なんですよね。そういったところをどうやって見分けるのかということが課題になるのかなというふうに思っています。
 総合評価です。総合評価に関しては、公共工事品質確保法、2005年にできた法律、2014年に改正されていますけども、質と価格というものをバランスよく評価していくといったことが原則になって、それを前提に国の場合は、公共工事においては総合評価が原則になっているんです。ただ、自治体においてはなかなか総合評価は浸透せずに、全面的に総合評価という自治体はないんじゃないかと思うんですね。あっても非常に少ないと思います。部分的に総合評価、あとは価格だけで見るという実務が多いんじゃないかと思います。
 何で今まで、よく聞かれるんですけども、今まで総合評価というものを原則化してなかった時代、2005年より前ですけども、じゃあ、これ質が悪い公共工事ってものが氾濫したんですかと、違うじゃないですかと。最低価格自動落札方式なのに一定の質が維持されていたじゃないですかと、本当に総合評価をやる必要があるんですかという問題意識をよく言われるんですよね。これというのは、実を言うと公共工事の歴史を考えなきゃいけなくて、昔は指名が一般だったんですね、指名競争が。実際には、いわゆる談合的な構造というものが非常に恒常化していたというか、当たり前だったわけですよね。つまり、談合によって一定の利益を保障をするという形で、そのかわり質のいいものをやりなさいという、ある意味官民の支え合いみたいな、もたれ合いみたいな部分があったと思うんですよ。ただ、今は一般競争ですから、やっぱり状況は変わっているという認識を持つべきなんですよね。なので、一般競争で、それでいろんな業者がいろんな価格、どんどん値段を下げてきて、それも質が維持できるんですかという問題意識をやはり2000年ぐらいから持ってきたという、そういった経緯があったというふうに記憶しています。ですので、そういった経緯を考えたときに総合評価という話になるわけですね。
 2014年になって、少し革命的な改革が行われて、適正な利潤を確保するという文言が入ったんですね。およそ公契約において、業者側の適正な利潤を確保するというのは非常に革命的だと思うんです。これもやはりダンピングというものを念頭に置いて、安過ぎるものというものは、産業施策としても公共工事の質の確保としても非常に危険なんだという問題意識が持たれていて、これ法律ですから、法律に書かれていることはやはり尊重しなきゃいけないということで、この問題をどう扱うのかというのが課題なんですね。
 あともう一つ、社会政策というものが公共工事、総合評価の中ではよく議論されます。例えば、この間も国交省の委員会で議論なされたんですけども、週休2日制をきちんと実現している業者はちゃんと評価しましょうということで、例えば総合評価で評価するとか工事成績に反映させるとか、そういった議論をされているんですね。そういった社会政策的な観点というものも総合評価の総合という部分に入ってきているわけです。そういったいろいろ議論が複雑化しているんですね、そういったものに総合評価はどう対応していくのかという問題があります。なかなか技術と価格とか、技術に対する評価をどうするのかというのは難しい問題です。ただ一つ、原則として、もう大原則としているのは、見える化です。やはりなぜそうなったのか、どういう経緯でこの点数がついたのかということについて、見える化というものをしていかなかったら、どこで誰がどう評価しているかわからない状態で、適正かどうかなんて評価できないわけですよね。
 じゃあ、どうやって見える化するのかって、また難しいんですよね。じゃあ全部の情報を公開するかといったら、全ての交渉プロセス、全ての情報というものをインターネットで公開するんですかと、そうするとまた黒塗りがたくさん出るんじゃないですかとか、そういった問題になってくるんですけども、出せるものは出すと、それもどこかで出すんじゃなくて積極的に出すというぐらいのことをしないと、今まで一連の議論で総合評価というものでいろいろ何か問題があるんじゃないかと言われている、その都民の不信というものはやはり拭えない、東京都はそういうふうな状況に直面しているというふうな認識を持っています。
 あともう一つ、適正化のために一番大事なものは、落とせなかった、落札できなかった業者が一番知識を持っているわけですから、おかしいじゃないかという手続ですよね、不服申立ての手続を機能させるということは非常に効果的だと思うんです。もし不服申立てというものがきちんとなされるようになれば、やはり発注者としても変な評価はできないわけですよね、不透明な評価もできないし、表に出ましょうと言われたときに、表に出られるものじゃないとまずいわけですよね。そういった意味では、このビッド・プロテストという発想というのは非常に大事だと思います。ただ、なかなか、じゃあその同じ業界の中で、ほかの業者はおかしいじゃないかって訴えるかといったら、なかなか日本では難しいのかなと。ただ、アメリカなんかでは、それこそ会計検査院がそのビッド・プロテストを受ける機関になっていますけども、それこそ何百件、何千件という単位でそういったプロテストあるみたいで、そういったものが機能するのであれば、適正化というものが図られる一つのきっかけにはなる、ブレークスルーにはなると考えます。
 次、アカウンタビリティーですね。アカウンタビリティーに関しては、先ほどの新聞記事でいろいろ書かれました。どうしてもその場しのぎの対応になってしまうと、不信だけが残るんですよね。何かやっぱりやっているんじゃないのというふうに思われて、その不信が積み重ねられると、何をやってももう信用されなくなると、これ非常に危険な話です。ですので、アカウンタビリティーの実現とか果たし方として、やはり都が、直接都の職員が説明するんじゃなくて、しかるべき第三者機関というものを恒常的に設けて、その第三者機関にきちんと調査させて、それに報告させるという形でプレス対応するとか、そういったことも考えてアカウンタビリティーをきちんと果たしていくということも必要なのかなというふうに思っています。
 やっぱり課題としては、専門性と速報性ですよね、そういったものをどう実現していくかということなんです。先ほど事前公表、事後公表のところで話しましたけれども、やはり事後公表にするといろんな問題が出てくるかもしれません、いろんなリスクを抱えます。そういった意味では、何かあったとき、きちんと対応できる体制、これをいかに構築するかということが課題になるんじゃないかと思います。
 あともう一つ、要は、具体的な機関の問題としては、例えば監査委員とか入札監視委員会、ただ、これは事後的なんですね。もちろん要綱とか変えて、もうちょっと速報的にやれと、もういわゆるアップ・ツー・デートでやれというふうになれば、監視委員会なんかもまた違う形になるかもしれませんけども、今のままだと、少なくとも前のものをやることになりますから、現在進行形のものについては評価できないわけですよね。これどうするかという、不正云々に関しては、例えば監察部門を強化するとか、そこにしかるべき、例えば弁護士とか、そういうふうな調査、評価ができる人たちに任せるとか、そういった形もあり得ます。なかなかこれ現在進行形の実務というものを直接コントロールするというのは難しいんですね、外部が。じゃあどう評価するのか。じゃあそれに対する責任というのはどういうふうにとるのかとか、なかなか難しい問題が生じます。ただ、少なくとも不正の問題に関しては、その監察部門というものを強化していく。例えば、アメリカでは、各省庁の中に検査官、インスペクタージェネラルという、いわゆる省庁の中の警察みたいな立場の役割があって、その部門があるんですね。その部門というのは大統領だけに責任を負うって形になっていて、そこが省庁の中の不正というものを暴いていって、どんどん調査していくって仕組みがありますけども、なかなか法令上の制約もありますので難しいですが、類似の制度というものも考慮に値するのかなと思います。
 もう一つ、15ページですけども、これは非常に強調しておきたいところが、チェック体制というのは、機関を設けて人を張りつけるというだけではなくて、何をチェックするのかということの視点も大事だと思うんですよ。ここに書きましたけども、日経新聞の先月の記事でありましたけども、ある大学のグループが、天下りが公共工事の落札にどう影響を与えるのかって調査をしたんですね。天下りを受け入れている企業を調査すると、1人受け入れると0.7ポイント上がっていると、これ結構大事なデータですよね。つまり、こういうふうなデータを前提に、じゃあ政策としてどういうふうな決定をするのかということ、そうすれば、もちろん因果関係がどうなのかというのはまた次の課題になりますけども、もしこれに因果関係があるのであれば、非常に効果的なワイズスペンディングになるんじゃないかというふうに思うわけですね。
 このグループは、過去にも、例えば再度入札において、結果的に前の入札における1位と2位の順位が変わってないケースが非常に多いって分析もしているんです。これというのは、ある種の談合の兆候ではないかと。つまり、結果的には再度入札をやっても同じようにしか変わらないのであれば、最初から話が決まっているんじゃないですかというふうな分析もしているんですね。これもすごく大きな分析ですよね。つまり、談合の調査というものに、非常にデータからアプローチすると。こういった状況は非常に談合の疑いが強いから、そういった状況をつくらないように制度づくりしましょうと、あるいは、そういったデータがあって非常に疑わしいのであれば、公取に情報提供をしましょうとか、そういった対応ができるわけですよね。やはり、データというものにどうつき合っていくのか、これも東京都としては非常に大きな課題です。ですから、それこそそういったものを扱う研究センターをつくられたらいかがかと。入札契約も1兆円を超えるわけですよね。そういったものに、そういった研究のために多少のコストをかけても、それは大きな成果が得られるんじゃないかと、十分ワイズスペンディングになるんじゃないかというふうに思うわけですね。
 その他です。ちょっとかいつまんで話しますけども、時間の関係もありますので、JV義務づけ、これは反対です。JVが反対なんじゃありません、義務づけるのに反対です。というのは、混合入札でいいと思うんですよ。つまり、JVしたかったらする、単独で入りたかったら単独、これが競争的じゃないですか。例えば、40者で10者のJV義務づけで4工区になってしまったら、先ほど加毛先生がおっしゃいましたけど、ぴったりすっと入ってしまうわけですよね。だから、これは最初からそうなることを予想しているじゃないかって話になっちゃうわけですよ。ただ、これ混合入札だったらまた変わるんですよね、状況が。
 ただ、一つ留意しなきゃいけないのは、じゃあ何のためにJV義務づけているかなんです。これは、ある意味、二次的政策、つまり中小企業というものもJVに参加させることによって技術の移転を図りましょうとか、地元の発注というものをふやしましょうとか、いわゆる官公需法の要請というのもあるわけですよね。じゃあ、JV義務づけをやめたときに、じゃあそういった要請というのはどこで果たしていくのかという、代替的なものは何なのかということの議論をしなきゃいけないということになります。
 あとは、補足として豊洲とオリ・パラについてですけれども、先ほど施設のケースで3工区について、1者JVで99%と話でしたけども、私はもうちょっと長いスパンで見るべきだと思うんです。つまりどういうことかといったら、その前に土壌汚染の問題があったわけですね。土壌汚染の問題があって、談合情報があったわけですよ。そこで落とした業者が構造的に次の施設もやっているんじゃないんですかって話なんですね。その部分を見なかったら、何で1者になっているのかって、1JVになっているのかって説明しにくいんですよ。なので、実を言うと、そういったJV義務づけたというのもあるかもしれません。それ以前の問題としても、やはり継続的にものを考えていく必要があると思うんですね。もっと言ってしまったら、さらにその後に設計変更をしているとか、その後に追加工事してるとか、そういったものも一連の問題として、本当にこの問題って何だったのかということは、やはり検証すべきじゃないかと思うんですね。
 その1.6倍云々の話もありましたけども、それだけの問題ではなくて、一連の問題。もっと前をさかのぼれば、もともと私の記憶では、豊洲の施設ってPFIとか考えていたって話なんですよね、2007年か8年ぐらいですかね。これはちょっと情報として不確かであれば指摘していただきたいんですけども、そういうふうな経緯というものもやっぱり踏まえて評価をしていくべきじゃないかと思います。
 工事費の乱高下って、オリンピック施設そうですけども、何でこんなに乱高下したのかというのが本当に関心事でありますし、都民みんな関心があると思うんですよね、私も一都民として非常に関心を持っているわけですけども、こういうのもやはり追究していく必要がある。入札契約という、いわゆるピンポイントの問題というよりは、いわゆる公共工事、プロセス全体の問題として、やはりトータルで考えていく必要があるのかなと思います。
 トランスペアレンシーの対象として、どうしても入札の結果だけ見るんだけども、そうではなくて、設計変更とか契約変更して、額が上がっているのであれば、それもどんどん情報提供しないといけないと思うんですよ。私は、3月4日のNHKのニュースではインタビュー受けて、これ何かっていったら瓦れき処理なんですね。瓦れき処理のケースで、要は、いつの間にかに契約金額が2倍、3倍になっていると。要は、契約変更とか追加工事とかでどんどん高くなっちゃっている。でも、ある発注者はそれを情報開示してなかった。入札の結果だけ情報開示してもわからないんですよ。トータルで情報開示しないと、はっきり言って、本当にそれが有効に税金が利用されたのかどうかというのはトータルで評価できない。そういった意味では、我々が今、情報開示、情報開示言っている対象も見直さなきゃいけない、そういうふうに思います。
 再度入札もそうですよね。再度入札が行われたときに、前の入札と再度入札で何が変わったのか言わなかったら、再度入札の結果だけ言われても評価しようがないんですよね。だから、それこそ1.6倍のケースも、1.6倍になりましたって、後だけ言われてもわからない。今回は問題として発覚したから前と後の問題と言われているけど、そういうのって少なくないと思うんですよ。そういうのもいろいろスキャンをかけて、どんどん開示をしていくという必要があるのかなと思います。
 最後に、問題は単純ではないということ、これはやっぱり認識しなきゃいけない。不確実性への対応をちゃんとしなきゃいけないということ。ただ、不確実だからわからないんで現状維持なんですというのは許されないということ。それから、甘えからの脱却というのも大事な話です。最後は知事の決断です。こういったいろんな意見を、留意点も考えながら、ぜひ英断をしていただきたい、そういうふうに思っています。
 以上です。ありがとうございました。

○事務局 楠先生、ありがとうございました。
 それでは続きまして、有川教授、よろしくお願いいたします。

 3.有川教授から説明
○有川教授 日本大学の有川です。よろしくお願いいたします。
 私は、自分の簡単な略歴ですけれども、30年ほど会計検査院という役所に勤めておりまして、退職後、日本大学の教員として十三、四年、いろいろな公共関係の研究をしておりますけど、その研究テーマの一つが公共調達だということと、その研究成果をある程度活用するという意味合いで、今、内閣官房にあります行政改革推進会議において公共調達の改善を平成24年ごろから制度的に進めておりまして、半期ごとにその計画を立てたものを第三者も検証していく、各省庁みずから検証するとともに第三者の立場でも検証するというようなことをずっと続けてきておりますので、そういった国の動向もある程度きょう参考にしていただけるのかなというのと、あわせてその行政改革推進会議のほうの意向を踏まえまして、昨年初めごろから、日本原子力機構に対する国民の信頼を非常に失ってきているということで、その公共調達についても非常に問題があるということなものですから、原子力機構の契約の大幅な見直しを7月に取りまとめまして、その取りまとめの座長をやった上で、今度はそのフォローアップを四半期ごとに契約監視委員会でやっていくということになって、今、第2ターンぐらいの、第2回目のフォローアップぐらいをしているんでしょうが、ですから、そういった動向も少し参考になるかなと思いますので、きょうの資料の中でそういったところも紹介できたらと思っております。
 それでは、つくっていただきました資料に基づいて話をさせていただきたいと思います。
 まず、五つのテーマのうちの最初の予定価格の事前公表に関することであります。私の書いた本を、すみません、引用する形で、ちょっと字が小さくて見にくいかもしれませんけれども、主として線を引いたところを中心に紹介していきたいと思います。
 1ページ、まずは予定価格の事前公表につきましては、先ほど楠教授からもお話しいただきましたように、国のほうは法制度的に事前公表を禁じております。その理由は、3行目から書いてありますように、入札者が単独でこれを探知することは不公平な立場に立たせることになりますし、それが単独でなくてもその情報が伝わるということは、談合の資料とされるなどの弊害があるという理由。
 それから、1行飛んだところに線を引いておりますけれども、もし落札者がないという場合の再度入札、あるいは再度公告入札、さらには入札で勝負つかなくて随契をする、そういった場合でもあらかじめ予定価格が知られているということは競争の要素を大きく欠損するという、欠くということになりますので、国の場合はこの考え方でもって事前公表をやってこなかったんですけれども、しかしというところのパラグラフにありますように、近年のその契約の透明性というような要請を踏まえまして、事後公表については、それを公表したとしても、他の契約の予定価格を類推させるおそれがないような、そういったケースについては事後公表はやっていきましょうということで、平成12年にできました公共工事の入札適正化法に基づく適正化指針以降、ずっと一貫して国はこの方針で進めてきているということであります。
 地方自治体のほうは2ページにありますように、注のところを引用する形で大変恐縮なんですけれども、当初の平成12年に最初でき上がった入札適正化指針では、国のほうの予定価格の事前公表については、法令上制約があるからという、そういう形式的な理由だけではなくて、2行目にありますように、その事前公表したときの弊害を明確に書いておりまして、落札価格が高どまりになること、建設業者の見積もり努力を損なわせること、入札談合が容易に行われる可能性があることなど実質的な弊害を列挙しまして、国に関しましては当初の指針からやってはいけないということが明示されているんですが、一方、自治体につきましては、法令上の制約がないからというような非常に形式的な理由で事前公表もあり得るべしというような書きぶりだったんですが、その次の平成18年のところを見ていただきたいんですが、第1回目の適正化指針の改正の段階で、地方公共団体についても国と同じようにその弊害が、事前公表の弊害が列挙されまして、その次に書いておりますように、事前公表の実施の適否について十分検討した上で、上記弊害が生じることがないよう取り扱うものとして、弊害が生じた場合には、事前公表の取りやめを含む適切な対応を行うものとするというふうに改められました。
 したがって、法令上の制約がない地方自治体についても、この平成18年以降は国に準ずるような形の取り扱いになっておりまして、それが明確にさらに打ち出されたのが平成20年の3月に総務省と国土交通省の連名で出されました通知なんですけれども、その中で、予定価格の公表につきましては、やはり弊害が三つ、同じような弊害が書かれまして、これによって、この弊害があることから、入札前に予定価格を事前公表することによる弊害を踏まえて、予定価格の事前公表の取りやめ等の対応を行うものとすること、もし事前公表を行う場合には、その理由を公表すること、次のまたのところに最低制限価格についてもしかりという、こういうような通知が出ております。
 注15のところに書いてありますように、さらに2回目の適正化指針の改正であります平成23年、3回目の適正化指針の改正であります平成26年、恐らくこの会議でいろいろ議論された平成26年通知というのは、この3回目の適正化指針の改正を踏まえた通知だと思うんですが、同じ考え方で進められてきているということであります。
 まとめのところでちょっと書かせていただいておりますけれども、このとおり地方公共団体につきましても、事前公表を行う場合はその必要性の検証と弊害の除去を行うということが求められるようになってきているところでありますし、また一者入札が高い蓋然性で見込まれる場合に予定価格の事前公表を行うということは、先ほど来、弊害が指摘されているとおりでありまして、事前公表に伴う弊害が極めて顕著になるという状況にありますので、価格競争等の利益を失っても事前公表によって何を守るのか、それを確保しなければならない公共の利益が何なのかということを具体的に明示する責任を官庁は要求されるということになるんだろうと思います。具体的にどんなものがあるのか、ちょっと私は想像ができないですけども、こういう理屈になるんだろうと思います。
 2点目の一者入札の話に入りたいと思います。一者入札の1ページ、これはすみません、本ではなくて、別なところで発表した文書を使わせていただきます。ことしの9月に出した文書なんですけれども、まず、1ページの左側にありますように、一者入札がどうやって登場してきたかというようなことをちょっと書いておりますけれども、ちょうど平成18年に工事以外の契約について、随意契約が国全体で8割近くあるということで、その随意契約の大幅な見直しということが、8割ぐらいあるやつを3割ぐらいに減らすという、かなり大胆な改革が行われたんですけども、そしたら、手続は競争なんですけれども、実際中身は競争になっていない。そして、多くの人たちが入ってくることを想定して予定価格を立てるものですから、従来から受注していた業者がその高くなった予定価格のところに入ってきて、逆に高どまりするという、いわゆる一者入札問題が発生してきまして、2番目のパラグラフに書いてありますように、平成19年11月に全省庁でこれに対応する対策を立てよう、そしてさらにそれを踏まえまして、20年の12月には行政支出総点検会議で『指摘事項-ムダ・ゼロ政府を目指して-』の中で初めて、このページの右側にあるように、丸で書いてありますけども、幾つかの一者入札の対応策というのが初めて具体的に書かれたんですが、2ページを見ていただきたいと思いますけども、2ページの左側の二重丸で「想定される一者入札の原因・全リスト」という表題のところに書いておりますけれども、支出点検会議で出されたのは幾つかの先駆的な事例で、その後平成21年、22年でこれらの動向を踏まえまして、国会からの検査要請を受けて、会計検査院が検査報告の中でかなり一者入札の原因分析をしております。それだけではまだまだ事例、一者入札の原因はあるということで、私のこれまでの経験などを踏まえて、一応考えられるリストを上げてみたのがこのペーパーになります。
 簡単に紹介させていただきますと、1番目として、まず実質的な公告期間の不足。形式的に確保していても実質的に確保してないというケースがままありますので、これも注意ということであります。それから、2番にありますように、もろもろの周知活動が不足している、それは受注業者の情報収集が足りないというのもあわせて同じような問題になります。3番目の偏った周知、これは周知不足の問題がクリアしたように見えても、その周知の仕方から一者入札を多く誘引するということでありまして、かえってまだ問題があるというところもあります。(3)に書いてありますように、特定の業者からしか参考見積もりをとらない、(4)にありますように、特定の業者だけを仕様書の作成に関与させて、意見招請なども行わない、こういったような偏りがあるケース。それから4番目にありますように、期間は期間でも、これは履行期間とか準備期間が不足するというケースでありまして、(6)にありますように、従来から契約を履行してきていて、ノウハウや受注態勢が整っている業者以外は履行が困難な短期の履行期間しか設定されないケース、(7)にありますように、年度末ぎりぎりの発注など、履行実績のない業者には受注態勢を整えることが難しい状況下で発注しているケース。それから、5番目にあります発注単位等なんですけども、これは発注のタイミングというのも問題になります。まず、発注の単位なんですけれども、(8)にありますように、契約履行が可能な業者の状況や契約履行の工程などから見て、不適切な発注単位が設定されているケース、多くは必要以上にまとめ過ぎて参入障壁をつくっている場合が多くて、昨年、公開行政事業レビューを踏まえまして、防衛省の契約で、庁舎内の管理について、特定の非常に秘密を要する、ノウハウを要するところの管理業務とそれ以外の一般的な庁舎管理業務をセットで発注しているものですから、どうしてもその一番ノウハウを持っているところの業者を抱き込んだJVっていいますか、そのグループだけしか1者で入り込めないことだったものですから、昨年、先ほどの内閣官房における調達改善計画のところのヒアリングで、行政事業レビューを引き継いで、29年度から業務の分割解体をしてもらうということで、今年度計画、29年度から始めるということになったところであります。
 それから、(9)は、受注態勢を十分考慮しないまま、各発注官庁が同時期に一斉に発注しているケース。震災直後は非常にやむを得ないケースもあるんですけれども、そういったことは関係ない段階でもこういったことがまま行われておりまして、卑近な例としては、限定的な工期のもとで大規模な工事を同じタイミングで入札にかけるのが。当然これにさらにJV要件なんかを加えたら、もう一者入札をやってくださいと言わんばかりのセットになりますので、JVにするかどうかは別としても、とにかく大規模な工事を短期間につくり上げなきゃいけないのに、時間をずらして入札するんではなくて、同時にどんとやったら、業者はどうしても調整せざるを得ない、複数受注して一つ辞退したら今度は指名停止をくらいますので、そこのところはやはり発注の仕方もよく注意しなきゃいけないということなんだろうと思います。
 3ページを見ていただきたいと思います。参加資格要件や仕様が限定的。10番にありますように、競争参加資格や業務実績等の入札参加要件を必要以上に限定しているケースで、これは先ほど来ご指摘いただいております、下のほうに手書きで注記してありますように、合理的な理由があれば別なんですけども、理由がないまま受注者をJVだけに限定するというような場合も同様に一者入札をもたらすことになるかと思います。
 それ以外にも限定的なものがあるんですけども、他方、7番にありますように、逆に限定的ではなくて、非常にファジーなやつがありますけれども、これも限定的であるのに対して、こちらのほうは全く曖昧な設定のケースなんですが、限定的、曖昧いずれの場合も参入障壁という点では同様の効果をもたらすということに注意しなきゃいけないと思います。
 (13)にありますように、入札参加要件が明確に定められていない、そうすると従来から契約していた業者以外、履行内容について十分知り得ないということになりますし、右側の(14)にありますように、仕様書の記載内容が明確でなくて、従来から契約している業者以外、履行内容について十分知り得ないということもあるということになります。
 それから、8番ですけれども、不必要な継続案件を創出する。債務負担行為を適切に行わないことによって、単年度契約、つまり継続案件を生み出してしまうというケースも一つ問題であります。
 それから、9番目にありますように、本来は競争でやるのが不適当なやつを無理やり競争にしてしまっているという、かなり大きな競争への数値目標が出るとこういうことで起こるんですけれども、それをやってしまうために、注記のところ、一番下を見ていただきたいんですが、こういったケースは、必要があれば、今、国とか独法は事前確認公募の手続を経て、むしろ随意契約に移行することも検討しなきゃいけない。もちろん随意契約のまだ見直しがかけてないときに、最初からこちらのほうにいくというのはなかなか難しいのかもしれませんが、随契でやるべきものをいたずらに競争に持っていくと、また弊害が発生するというところであります。
 また上に、真ん中あたりに戻っていただきまして、以上、この(1)から(17)までの想定される一者入札の原因を十分に踏まえまして、もちろん原因分析が前提なんですけども、それらを除去する対策を早急に講ずることこそが実質的な競争に向けての改善に向かうんだろうと。これを十分に行わないで、一者入札だからといって、つまり発注側の原因を除去しないで一者入札の結果だけを見て、もう一回、入札をやり直すというようなことを安易にとるというのは、まさに、発注側の責任を業者側に転嫁することになりますので、これは慎んでもらいたいと思います。まずは、もし一者入札があったから契約あるいは入札を見直すといったときには、まずその入札や契約に関して、きちんとこういった発注側の責務をちゃんと解除できるようなことをやったかどうかということをきちんと踏まえた上で、一者入札に対して非常に厳格的な対応をしていただきたいなと思います。
 それについては、なおのところに書いてありますように、以上のような発注者側の原因として想定される一者入札の原因全てを除去したにもかかわらず、一者入札が続くような場合もあります。あるいは、入札説明書を取りにきてから最後の札入れまで非常に不自然な動きがあるケースもありますので、そういう場合は、こういった除去をしなくても、ある程度一者入札に対してもう一度入札をしようという判断もあり得るのかもしれませんが、とにかく隠れ談合が行われるケースもありますので、そういった場合は、発注者側としては可能な範囲で落札結果等についてのフォローアップを行って、必要があれば、公取に対する情報提供ということもあるでしょうし、入札のやり直しという選択肢も可能になるのではないかと思います。
 4ページから5ページにかけては、国のほうがその取り組みをどうやって行っているかということで、4ページには国のほうの指針として、原因の分析を適切に行って、それを踏まえたチェックリストをきちんとつくりましょうねということでありまして、5ページのほうの右側に書いて線を引いているのは、それらのチェックリストをもとにして、経済産業省のチェックシステムが取り組みの概要のところにありますように、3段階で入札前の自己点検、開札後の契約締結前の内部点検、さらには契約締結後の2段階の外部点検、これは3行目にありますように、外部監査人の点検と契約等評価監視委員会によるこの2段階の点検をやるというふうな、こういう仕掛けになっておりまして、したがって、この一者入札につきましては、早急にその発生原因の分析とそれに基づくチェックリストをつくりまして、時間をとる関係もあるので、もう既にかなりのチェックリストが公共機関で共有されていますので、それをすぐ活用するというのが一番手っ取り早いんだろうと思いますが、そのチェックリストをもとにして、チェックシステムを早く構築するというのが必要なんだろうと思います。
 6ページは、大変恥ずかしいですけど、自分で先ほどの文章を書いた後、さらに私の参加している行政改革推進会議の委員会で、若干自分がさらに追加して言っているところもあるんですが、複数回一者応札の1番目の業務内容の開示・引継のとこの1番目のぽつと4番目のぽつにありますように、専門性の高い業務やシステム関係については、既存の成果物を可能な限り公表しましょうと。可能な限りいろんな閲覧資料化をして、引き継ぎ期間も十分に確保できるようにしましょうと、こういったものを一者入札の改善には必要だろうと、こういうふうなところで、これは3月にまとめられたところなんですけども、こういったようなところもさらに一者入札の改善に必要なのではないかと思います。
 次に、最低制限価格の関係です。これはあっさりやらせていただきたいと思いますが、最低制限価格、ちょっとやや歴史的な話を2ページにつけておりますけれども、昭和30年に建設業法の一部改正法というのが出されまして、国においても最低制限価格制度を設けようという動きがあったんですけれども、左側にありますように、政府が実質的な理由、左側の最初の箱の中にありますように、安い工事が粗悪工事であるから、結局国に損を来すという、そういう実証はなされてはないんではないでしょうかと、そのような懸念があるんであれば、むしろ不信用・不誠実な業者の排除や監督・検収の強化によるべきだと。あるいは、ダンピングについては、むしろそれ以外の法規制のほうでやっていくべきではないかとか、もろもろの理由で政府が強く反対し、さらにその次の行に書いてありますように、会計検査院も独自の見解をこのとき出しておりまして、考え方は政府と同じという状況であります。
 3ページを見ていただきたいんですが、そのときに30年に政府はカウンター案、対抗案として、初めて低入札価格調査制度というものを出したんですが、このときはいずれも廃案でありまして、ところが3年後、この昭和33年、東宮御所の1万円入札事件というのが発生したこともありまして、左側にありますように、これはやっぱり制度的にまだ不備があるということで、ここで会計法等、それから地方自治体へは地方自治法施行令の改正がそれぞれ道をたがえるようにして制度化が進んだ。ウにありますように、国のほうは低入札価格調査制度だけの制度に、エにありますように、昭和38年の地方自治体が選んだ道は、「&」と書いてありますように、低入札価格調査制度プラス最低制限価格制度をやる。それはもう実情として多くの地方公共団体でやっているということなんで、ここで何とか法制化してもらえないかということだったわけですけど、もちろんもろもろの反対意見もありましたので、4ページを見ていただきたいと思いますが、4ページの最初の線を引いてあるところを見ていただくと、でき上がったばかりの地方財務会計制度調査会に諮問がなされまして答申が出されたんですけれども、答申は、大綱では国の契約制度と同様な規定にすべきであるという見解をとっておったんですけれども、最終的な文章としては、最低制限価格を設けることができるものとするけれども、最低制限価格は公正な手続によって、合理的なものとして定めなければならないとして、限定条件つきで認めたという状況であります。したがって、注記にありますように、その趣旨が今、最低制限価格の根拠規定になっております施行令でも、当該契約の内容に適合した履行を確保するため、特に必要があると認めるときはやってもいいよという規定になっているわけですけども、残念ながら、この右側の最後の3行に書いてありますように、その後、例外的に認められたはずの最低制限価格が大手を振って低入札よりもそれを凌駕するような形で運用されているケースが続いたこともありまして、5ページにありますように、昭和51年度、会計検査院の検査報告で農林水産省の補助事業で、たまたま調査官になりたての私が担当した案件だったんですけども、余りにも全国の最低制限価格の実態が、予定価格と最低制限価格の幅が1万円とか0.1%とか、ずばり当てましょうなような状態で利用されたこともありまして、この最低制限価格にして速やかに改善を求めなきゃいけないだろうということで、次々指摘が続くんです。ここにありますように、そのパターンは高率な価格の設定、その次が法令で認められていない契約類型に関する設定、それから法令で認められている契約類型であっても個別的に必要性が認められない設定、さらにはもう低入札制度のほうへ切りかえどきではないでしょうかというような提言、こういったような提言がなされ、あるいは指摘がなされる状況になっております。
 7ページを見ていただきたいんですけれども、この4番目のパターンの検査院の提言は、ちょうどこれが出された平成9年度検査報告というのが平成10年なんですが、平成10年の建設省の中建審の建議においても、この右側の最後の4行にありますように、低入調査のほうが最低制限価格に比べて個別原価を審査できるという点でより望ましい制度であるとされており、現に都道府県及び市町村においても低入制度のほうに移行してきている状況にあるという、そういった建議を踏まえてこういうレポートがなされたということであります。したがって、まとめを見ていただきたいんですが、この最低制限価格制度の制度によってきたる制定経緯と会計検査院報告のその視点と中建審の建議等も十分踏まえて、今後最低制限価格を設定する場合には、機械的に設定するんではなくて、設定の必要性や設定内容の合理性について個別に検証することが求められる段階ではないかと思います。
 次に、総合評価の話をしたいと思います。総合評価でありますけれども、これもまた本ではなくて、5月と7月に書いた文書からで大変恐縮ですが、国の場合、総合評価の根拠は、1ページの左側にありますように、会計法の29条の6第2項、固有名詞は使われてないんですが、この規定を根拠として総合評価が行われることになっているんですが、1ページの右側を見ていただきたいんですが、この根拠規定は、実は先ほどの36年の会計法の改正によって設けられたところでありましたが、実際総合評価が始まるのが平成7年からであります。これは、ここに書いてありますように、スパコンや通信機器、こういったものに関連するサービスなどの分野で徐々に総合評価が行われ、公共工事に至っては、平成10年まで1件も総合評価は行われておりませんでした。また、目を地方自治体に転じますと、平成11年の地方自治法施行令の改正によって根拠規定が設けられるまでは、総合評価自体、その根拠の規定がないという状況でありました。
 このような状況は、実は総合評価が制度化された国の場合、予算決算会計令、予決令で歯どめがかけられておりまして、個別に大蔵大臣に協議をしなきゃいけない、これが各官庁、嫌がったところでありまして、また制度化がおくれた地方公共団体の場合は、実は、随意契約の根拠規定が国よりも弾力的に、首長の裁量権がちょっと入るような規定になっていまして、恐らく総合評価の代替機能をここが果たしてきたんではないかというふうに思われます。
 では、2ページの左側ですけど、なぜ平成に入るや、情報機器を中心とした調達分野において、総合評価が一気に行われるようになったかというのは、これはまさに日米経済協議に伴うものでありまして、このプレッシャーを受けて、このプレッシャーを受けたコンピューター、電気通信、医療機器の3点の製品とサービスについては、右側にありますように、予決令の歯どめを外すというウルトラCが行われました。これについては個別の協議は要らないからねと、もう協議を調ったことにするからね、この手法を公共工事が横目でにらんできて、この後、公共工事やそれ以外のものがどんどんこれに追随するという状況になります。
 3ページを見ていただきたいと思います。3ページの左側、国には根拠規定が先ほど言いましたように、唯一歯どめが予決令で、その歯どめが外される状況になってきましたので、要は法令には全くルールがないところで、通達でどんどん行われているところがあるものですから、3ページの左側、真ん中にありますように、コンピューター関係のこの分野でも、実は除算方式とそれから加算方式、価格と価格以外を1対1、それから価格の関係を、価格をさらに低く置く1対3というような、こういう三つのトリプルスタンダード、トリプルと言ったら怒られるかもしれませんが、やや要件は変えているんですが、やや誤解をしかねないようなルールがあるものですから要注意ねというふうに私も言っていたんですが、早速かんぽ生命保険がその落とし穴に落ちまして、顧問をされています加毛先生が委員長をされている政府調達苦情検討委員会に申立てがありまして、契約破棄の提案がされて、契約やり直しということになりました。これは、この右側の箱のところにありますように、入札説明書を読んでいただくとわかるんですが、価格対価格以外の要素が1対1と1対3のルールが混在して入っています。これはもう1対1と1対3ですと、予定価格にもよるんですけれども、価格の要素を一気に価格以外の要素が吹っ飛ばす構成になりますので、入札する業者にとっては、その割合は非常に死活問題になるはずなんですけども、なぜか入札説明会でこれを見た業者から質問が一つもなく、さらに入札のときには説明会に来たうちでは1者しか札を入れないという摩訶不思議な状況があったというのも一つ大きな問題なんですけども。4ページの左側を見ていただきたいと思いますが、公共工事につきまして、平成12年3月に包括協議が先ほどのコンピューター等の関係に追っかけてできるわけですけども、これは平成12年、先ほど言いましたように公共工事入札適正化法ができるその契機になった、全国津々浦々で地方公共団体の談合問題がたくさん発生した、あるいは国でも談合問題が発生したということで、もう指名競争から一般競争へ待ったなし、そして、一般競争になるんなら総合評価をセットにしなきゃいけないというのが本音ベースで出てくるようになりまして、だったら予決令の歯どめをとってねということで、こうやって包括協議が、ここでも行われるようになった。(3)にありますように、地方公共団体も平成11年、こういった施行令ができて根拠規定が設けられたのは、まさに12年から待ったなしの一般競争を開始するための動きだったというわけであります。
 5ページを見ていただきたいと思います。その後を追っかけて、4番にありますように、調査・研究開発・広報契約が平成18年から包括協議が行われますが、これも先ほど言いましたように、平成18年、工事以外についても随契やめなさいという、待ったなしという状況になりまして、これきっかけはその前の2年間の会計検査報告なんですけども、この随意契約をやれなくなったということで一般競争にする、だったら総合評価をセットでやらなきゃいけない、だったら包括協議にしてねという、こういう流れになったということだと思います。
 こういう状況でありますので、次々通達でその場その場で変えてきているところがありますので、この6ページにありますように、九つのカテゴリーぐらいに分けるぐらいにルールが多岐にわたります。それぞれの内部でいろいろ問題があるだけでなくて、それぞれの間の整合性も非常に首をかしげるところなんですけれども、ちなみに、ローマ数字のⅡの公共工事は、国とか独法は除算方式なんですが、東京都の場合は加算方式1対1、加算方式1対1は、国の場合で行われているのはこのローマ数字Ⅰの2のパターンだけなんです。それをやっちゃいけないと言っているわけじゃなくて、これはあくまでも国のほうで示しているガイドラインですので、それぞれの主体がそれぞれの考え方に基づいてルールをつくることはあり得るんだろうと思いますけれども、要は、少なくとも除算方式より1対1、1対1より1対3というのは価格の要素がどんどん弱くなっていくということを十分頭に置いておかなきゃいけないんだろうと思います。
 7ページを見てください。まとめのところの段ですけれども、総合評価方式の性急な拡大に関して憂慮されるのは、総合評価方式の実施のための基盤整備が必ずしも十分でないまま拡大、推進が図られているという点であります。次のパラにありますように、①公正な選定基準、②公正な選定手続、そしてこれらの基準、手続に基づく適切な運用、そしてこれら全てについての透明性の高い仕組みが確保される必要があるんですが、次のパラにありますように、各種のアンケート調査で、現場で担っている人たちは、やはり客観的な評価項目の設定、客観的な評価方法の設定に非常に頭を悩ませている。それは価格のように万人に共通する客観的尺度となりにくい総合評価のもう宿命なんでありますので、先ほど楠先生もおっしゃったとおり、やはり総合評価方式における生命線は、下から3行目にありますように高い透明性の確保なんだと、ここが非常に注意しなきゃいけないということであります。
 総合評価にはもう一つ大きな問題がありまして、8ページを見ていただきたいんですが、8ページの右側のほうのまとめ、その2と書いてある2パラのとこです。価格以外の要素がどんどんふえているんですけれども、そのうち、積算などのその価格の要素については、契約実施機関が従来どおり、法令どおり担っているんですが、価格以外の要素については、基準の設定や評価、検証は契約実施機関以外のもの、主として要求原課の担当者が担うようになっております。しかも品質確保の名のもとに価格以外の要素のウエートが先ほど来、見ていますように、価格の要素を日ごとに凌駕するという状況にあります。とすると、ごく最近における契約の執行においては、公共契約の重要な部分を契約実施機関でないものが会計法令の枠外で、しかも会計責任を直接問われないポジションから行っているという問題がありますので、ここのところを非常に注意しなきゃいけない。
 ちょっと話、飛ばしましたけど、左側の第1図にありますように、ルールの設定段階にも何段階にわたって、そして、その運用段階にわたっても、何段階にもわたっても主観的な要素が介在しますので、こういったものを会計責任を負わない人たちが主として行っているというのは非常に危険なところであります。さらに、先ほど楠先生がおっしゃったように、最近この総合評価などの価格以外の要素のところを使って、別な政策目的を、公共調達という政策に従う手段ではあったはずの公共調達で政策の目的を同時に実現させようという動きが非常に強まってきていますので、その部分にはこの危険性がさらに伴うということもありますので、ここのところの制度設計をよく注意しながら総合評価をやらなきゃいけないんだろうと思います。
 ちょっと時間超過して申しわけありません。最後に、チェックシステムの調達全般に共通している部分を今と同じ資料を使ってもう一度確認させていただきますと、1ページの右側にありますように、今、総合評価で話したことは、要は全ての調達のチェックシステムに共通する話でありまして、要は、基準をきちんと、公正な基準をきちんと設定すること、そして基準をつくっただけじゃだめで、その手続を、公正な手続を設定、確保すること、そして、制度をつくっただけではだめで、それを適切に運用すること、そして、これら全てについて、きちんと透明性の高い仕組み、それは内・外からのチェックシステムが働かなきゃいけないので、右側の注記にありますように、きちんとした内部統制組織とモニタリング体制と情報開示体制、そして開示したものから、先ほど楠先生が指摘されたように、いろいろ不服申立てとかいろんな意見をいただけるような体制をつくるということが非常に重要なんだろうと思います。
 ちょっと時間が来ましたので、あとは資料の解説だけさせていただいて、後ほどの議論で補足させていただければと思います。
 2ページでは、そのうち各論として、予算のチェックシステムについて若干補足させていただいております。
 それから、4ページと5ページは、これは5ページの一番最後の注のところを見ていただきたいと思いますけれども、平成23年に公正取引委員会からのレポートとそれから入札適正化指針の改正、23年改正の中で、外部からの働きかけに対して、きちんと記録を公表しましょうよという制度設計が出されております。これがきちんと行われるようになれば、弊害が多い予定価格の事前公表なんていうのを選択する余地はないはずなんで、早急に、この既に求められた制度の実現を図っていただきたいと思います。それは、次のところに、ちょっとくどいようで資料をつけておりますけども、原子力機構の見直しの整理の中で一番最後のあたりに、そういった報告制度についても作っていただいて、これを今、実際動いているかどうかフォローアップしているというとこであります。
 ちょっと時間延長してしまって申しわけありませんでした。
 以上でございます。ありがとうございます。

○事務局 有川先生、どうもありがとうございました。

 4.意見交換
○事務局 それでは、意見交換に移りたいと思います。ご発言の際は、挙手の上、お手元にあるマイクを使ってご発言をお願いできればと思います。
 では、まず飯塚顧問、お願いします。

○飯塚特別顧問 大変貴重なご意見をありがとうございました。これだけすばらしいご意見をいただけるんであれば、もっと前にやればよかったなと思ったぐらいであります。
 きょうの話は5項目とか言われているけれども、大きく論点としてなるのは一者入札の問題と最低制限と低入調査の問題、その二つが主要なものだろうと思います。楠先生の10ページに低入調査価格の調査の工夫とあります。楠先生は、その低入が原則であって、最低制限制度というのは例外だと、あるいは有川先生も最低制限というのは個別的なもので、公正な手続と合理的な理由づけがなければだめなんだと、機械的に適用してはいけないというふうにおっしゃいました。
 私は、今の特別顧問になった去年の8月に東京都の資料を見て驚いたのは、WTO以外は全部最低制限でやっていると、99.5%が最低制限である、それは極めて機械的な適用であって、個別的なその合理的な理由を求めているわけでも何でもないということがありました。それはもう、こういう学問的なことを別としても直さなければいけないというふうに思っていますが、ただ、じゃあ直した後どうするのかと、最低制限をやめて低入調査になったときに、楠先生の11ページに行政コストがかかるだろうと、どうやってその行政コストを適正なものにしていくのかということが大事な論点だろうと思います。
 私は、一番大事なのは品確法の要請に応えること、中でも下請けの社会保険加入の問題というものを、そのポイントを絞ってチェックしていくと。東京都は、その下請けの社会保険加入の率というのは、47都道府県中47位です。つまり、お金は元請けには行っているけれど、下請けには行っていないと、その状況は直さなきゃいけない。そういう大事な核となる部分をチェックしていくということは、多少行政コストがかかっても必要なことだろうと。社労士に外部委託すればできる話ですので、そういうことを考えるべきだろうと思います。
 それから、この関連で、じゃあ私の一番今、思っている疑問は、国の低入調査の件数が非常に少ないと。国は、その最低制限価格制度はもちろんとらない、先ほど大蔵省と会計検査院が猛烈に反対したという歴史があってとらないにもかかわらず、現在その施工体制確認型という形で、一定の基準価格を下回ったら30点、点数を引いてしまうと、これはもう事実上の最低制限制度だと言われていますが。ちょっと話がずれるので恐縮なんですが、一言だけ、両先生はその施工体制確認型について、どうお考えになっているかお教えいただければと思います。

○有川教授 私からでよろしいでしょうか。

○事務局 どうぞ。

○有川教授 施工体制確認型は総合評価の一類型なんで、顧問のおっしゃるのは、国のほうで事実上、最低制限価格と同じような運用をされているという総合評価版だろうと思います。実は、もう一つ特別重点調査というやつ、総合評価をやってないやつでも低入とダブルスタンダードで、もうちょっと低いところで特別重点調査価格というのを設けていまして、これにひっかかると、即アウトじゃないんですけども、1週間の間に膨大な資料を出さなきゃいけないという形になっていまして、ですから、施工体制確認型で価格の低いところを30点どおんと引くと同じように、こちらにひっかかると、やっぱり最低制限価格、非常に似たような形で切られるところはあるんですけど、ただしチャレンジはできるんです。
 ただ、私が今、その施工体制確認型にも特別重点調査に対しても批判しているのは、1週間のうちに膨大な資料を求めるというのは、事実上チャレンジできないような仕掛けになっているので、低入調査より低い価格で設けて、そんなに極端な価格の場合は、常識的には履行できないでしょうと考える蓋然性の非常に高いところの価格を設定して、そのときに、逆に今度は立証責任というか説明責任、つまりそれでもできるんですということを業者側に説明責任を転嫁するというやり方は、私、決してあり得ないことではないんだろうと思いますけれども、ならきちんとそれを説明責任、説明できる期間と資料の要求をするべきじゃないかということでいろいろ批判をしてきたんです。実は、これも加毛顧問が委員長をされている政府の苦情調達委員会で日本スポーツ振興センターの国立競技場の解体工事の契約のときに、同じように契約破棄と提案をされましたけども、そのときもこの特別重点調査が問題になりまして、最終的にその特別重点調査があるから契約破棄という形ではなかったんですが、別な理由で契約破棄になって、もう一回やり直したら、同じ業者がまた特別重点調査にひっかかって、そしたら、今度は特別重点調査にもう一回ひっかかった業者がいろいろ説明したものでクリアさせたというケースがありますので、ですから、運用の仕方だろうと思います。施工体制確認型も特別重点調査の仕方も最低制限価格と同じような運用ではなくて、機械的な足切りではなくて、実質的な審査を、その低入よりも低いところで、これは法令に書いていない制度ではあるんですけども、法令よりも低いところでおいて挙証責任を転換するということは、適切な制度設計であれば、あり得べしかなというふうに思います。

○楠教授 国の場合は、本来であれば、本音では恐らく最低制限価格みたいなことをやりたいのかもしれません。ただ、それは法令上できないということなので、いろいろ解釈上可能な範囲でその低入札というものを防いでいこうという意図は非常に強く感じます。例えば、品質確保点をゼロにしてしまうとか、そうすると、もう総合評価で逆転できないという話になってしまうわけですよね。ということは、実質的にはこれ最低制限価格ではないかと、有川先生がおっしゃったように、これ批判対象になるわけですよね。だけども法令上可能なんだということでずっと運用しているわけです。
 ですけども、実際に実務的に望ましいのかというと、これは先生がおっしゃったように、また問題を抱えながらやっているわけですよね。なので、実際にひっかかってしまっても辞退することになるので、結果としては低入にならないというか、入札の結果に残らないわけですよね。ですから、そういったその下限価格を切ってくるようなケースがほとんどないという話になるわけです。
 よく聞くのが、特別重点調査というもののぎりぎりを狙ってやるんだけども、予定価格が事前公表されてないので、ぴったり合わせようと思って、間違えてちょっと低くなってしまったら辞退という実務が非常に多いんですよね。なので、実際に国なんかの運用の細かに見ていくと、そういった実態が見えてくるというのもあります。制度上、望ましいかというと、私は望ましいとは思わないんですけども、やはり自治体がどうしても最低制限価格に頼るのと同じように、国も余り安い価格を入れられたら困るという本音があるということなんですね。国の場合も自治体の場合もそうですけども、その予定価格自体を予算に、予算とリンクしているのであれば、使うことにちゅうちょがないという本音があるんですよね。本当はそれはだめで、できる限り一番合理的に使わなきゃいけないんだけども、やはり安いことによって何か問題が起こるというのを非常に危惧するんですよね。高くていいものだったら、予定価格の範囲だったら、それは余り危惧しないというか、余りちゅうちょがないというのが、恐らく発注者側の心理なんじゃないかと思います。それが甘えなんですよね。それが結果的に、本当はもっと合理的にできるものが合理的にできないという結論を生み出すので、改善の余地があるんですけども、なかなかこれをどうすればいいのかというのは難しい問題ではあります。

○事務局 ありがとうございました。

○宇田特別顧問 質問よろしいですか。

○事務局 はい。宇田顧問、お願いします。

○宇田特別顧問 どうもありがとうございました。大変よくわかりました。
 今我々は、制度を変えるのが一つ、それから今後運用上のチェックをしっかりやっていこうということを今、議論してる。そのチェックというのは、主に、もちろんコンプライアンス的なチェックもあるけれども、経済合理性が成り立っているかということ、あるいは個別の案件もそうだし、全体の統計的なチェックもしようということにしています。
 1点お聞きしたいのは、その上で、組織としてこれが何ていうんですか、自律的に機能していくためにはどうしたらいいのかと。もちろん制度も運用方法チェックもしっかりやりますと。しかしながら、この発注の現場というのはいろんなところにあるわけで、これらの人たちが、この当然コンプライアンスにはひっかかると自分が困るので、そういう意味はありますけれども、積極的にこのワイズスペンディングに対してもコミットをし、あるいは自律的に考えていこうというふうに組織が思うにはどうしたらいいかと。私は、民間企業ではこの例は幾つもありますけれども、公共的なこの発注を担うという面の中で、自律的なこの発注の改革というのは、何か進める上でヒントがあればお聞かせ願えるとありがたいなと、こんなふうに思いました。

○楠教授 これはアメリカの例なんですけれども、その合理的な調達を実現した職員に対する表彰制度というのがあって、そのインセンティブがどうなのかって難しいんですけども、やはりそういうふうなものをきちんとたたえていくというふうな仕組みづくりって一つあるのかなと思うんですよね。それをきちんと知事が評価して、こういうふうな調達実現したんだから非常に評価しましょうということで表彰して、それを公表していくというのは、プライドという面では一つのインセンティブなのかなと思います。
 あとなかなか難しい、民間であればやっぱりマーケットの要請というのがかかわってくるので、そのマーケットに対してどう応えていくのかということが効率性の原動力だと思うんですよね。いわゆる公共機関というのはマーケットの評価がないので、予算を取ってきてしまえば、それは使うことにちゅうちょがないんですよね、実を言うと。それを超えてしまうと問題になるんですけども、やはりその合理化というよりは、むしろ保険を掛けて、お金をかけてでも保険を掛けようと、いいものをつくろうという、そういうふうなモチベーションが高いと思うんですよね。だから、どうしてもそこに甘えが生じてしまうんですよ。なので、そういったものをどうやって効率化していくのかということは、これは本当に永遠の課題かもしれませんけど、一つの案としては表彰制度があると思います。

○有川教授 コンプライアンス自体、まだ十分でないというところもあるんだろうと思いますけども、コンプライアンスについての周知徹底とか、それを守らせていくということも非常にこれからの課題として一つあるんだろうと思いますが、それ以外に、きょう私、くどいかなと思うぐらい話させていただいたのは、恐らく予定価格の事前公表がどんな効果をもたらすかとか、一者入札って一体どういった問題なのかとか、あるいは総合評価にどんな問題が発生しているのかとか、近年ではその契約の中にいろんな政策、中小企業政策だけではなくて、社会保障から環境から、あるいは雇用政策からもろもろのものを加味させてくると、公共調達とそういったものをどう兼ね合いをつけるのか、恐らく現場の方たちがよくわからない、それはなぜかというと、そういったルールが必ずしも十分法令に書いてなくて、そういったものを国も今、通達行政化していて、ややパッチワークのように次々こう整合性が十分とれないようなところで進めているところもあるので、恐らく、この契約とか調達に関係する方たちがみんな共通の問題意識を持ってレベルアップしていかないと、つまり問題意識も共有しなきゃいけないし、それに対する改善策も日々お互い議論しながら共有しなきゃいけないんで、国のほうも最近その調達改善計画とその検証という過程を経まして、それぞれの省庁が全部集まって、同時にみんなで議論をしながら情報や問題を共有するという形を進めているので、都としても都なりのそういうふうな手法を考えていただけるとありがたいなと思います。

○事務局 宇田顧問、どうぞ。

○宇田特別顧問 どうもありがとうございます。もちろんそのコンプライアンスの徹底はスタートですけども、あとそれに基づいて、この自律的なものを、この変化をみずからやることがいかに大事なことなのかということについて、おっしゃるように、徹底というのはこれから私たちも図っていきたいというふうに思います。
 それから、外に向かっての開示と、それから中に向かっての今おっしゃったような徹底と、これ両面から進めていく必要があるかなというふうに思いました。民間である場合には、この評価の仕方とか、それからあるいはこのプロセスを評価していく、あるいは結果でも数字でも評価していくというようなことが割と自由にやりやすいんですけれども、今回の場合には、むしろ中の質、この業務の質みたいなものをいかに図っていくかというふうな評価していくかということも、社外の人間が言うのも変で、実は財務局の方がコメントを求めたほうがいいかもしれませんけども、重要だなと再認識をいたしました。どうもありがとうございます。

○小池特別調査員 じゃあすみません、よろしいですか。

○事務局 小池調査員。

○小池特別調査員 きょうは両先生から非常に貴重なお話を伺うことができまして、まず御礼を申し上げます。
 1点ございます。楠先生のほうからご指摘がありました、レジュメの18ページのところに補足として頂戴した中、3行目、要するに、今回の入札のみならず、全体の経緯や関連したものをもう少し検証する必要があるというお話でした。これまで私どもチーム、それから財務局の方々と一緒に検証してきた中に、オリ・パラ施設、失礼しました、豊洲の施設の建設ですが、土壌汚染対策工事との関連も指摘項目には挙がりましたけれども、なかなか、そこのさらなる調査等々ができなかったという点については、ちょっと反省というところがございます。まずそのご報告も兼ねてお伝えしました。
 それからもう一つは、先ほど来、どうすることが一番の検証、実効的な検証かとかという話の中に、進行形のものについて、監察的な目を持って行うことも必要というご提言もありましたけれども、それらは非常に新鮮なところもあります。事後的な検証がどこまで追いつくかという大きな問題を今、抱えているのですが、進行中の入札制度契約について、どのようなチェックができるかというお話を聞かれた財務局の皆様方の中に、急にいま聞かれて、「こんなことが」というのはないかとは思いますが、進行上のものをチェックする機能ということについて、何かお考えがあったらここで聞かせていただければと思うんですが。

○事務局 十河部長、お願いします。

○十河財務局経理部長 まず、両先生、ありがとうございました。
 今、宇田顧問からも内部的にどういうふうに自律的に進めていくかという話があって、一つ、その進行形のものに対して、事前のチェックというか、今現在のものの妥当性、それはいろいろとあると思います、一者入札やらいろいろな問題をチェックするときに、その今現在の妥当性についてチェックするやり方として、これまでは行政内部のその入札に当たっての、その入札、指名競争委員会、あるいは入札のさまざまな形態に応じた委員会というのを行政内部でその都度その都度合議的にチェックをして、それで認めていくというやり方をしていたわけですけども、それと事後的なチェックとして監視委員会等で個別案件を監視していく、それが不十分であったんじゃないかというご批判は今いただいていて、今後、事後チェックについては非常に充実していく必要があるというふうに思っています。
 事前のチェックというものにつきましては、さまざまなチェックする対象があるんですが、例えば低入札の話などにつきましては、先ほど楠先生からコストの話が出ました。その件数とコストの問題、行政内部でできるのかどうかって、件数の量の問題というのと、あと、例えば談合情報みたいなものに対して、行政でそもそも調査権限がなく、事前にチェックできるのかという問題。それと、個々の案件、例えば一者入札に対してどうなんだろう、例えば、これはやめるべきじゃないかというようなことが今後あったとした場合に、それを事前にチェックするのが行政の内部だけでいいのかどうかという話がありますけども、そういうことに関しても、基本的にその第三者機関みたいなものが要るのか要らないのかというのがあるんですけども、第三者機関をつくって事前にチェックするというのが速報性としてできない場合、どうしても事後検証になってしまうということもあると思いますし、速報的にできるものをある条件下で設定して、なるべくチェックができるようにするというのはこれから考えていかなきゃいけないかなというふうにも思っています。それと、その事後のチェックにしろ事前のチェックにしろ、あらゆる情報を十分に公開して、世間に一般的に公開をして、広くその行政の決定過程を見ていただくということが大切かなというふうに思っています。
 それと関連して、先ほど有川先生のほうから、例えば一者入札をどう扱うかという問題について、その発注者としての責任を放棄して、ただ形式的に一者入札に対して対応してはいけないというようなお話がありました。東京都では、東日本大震災以降、かなり復興需要あるいはオリンピックが決定したということもあって、資材の高騰、人材不足等から不調や一者入札がその二十五、六年、急激にふえたということがあります。そういうこともあって、なるべく入札に参加しやすい環境をつくる、環境に向けてという取り組みでさまざまな取り組みをして、予定価格を妥当なものにどうやったらできるか、あるいは公表の仕方、入札の公表の仕方、あるいは技術者配置基準を緩和したり発注時期を平準化したり、さまざまな取り組みをした結果、若干落ちついてはきているんですが、まだ、例えば一者入札で言えば、今年度の半期で全工事の15.8%ぐらいがある、5,000件の15.8%というと七、八百件ということがあって、これを発生要因をチェックして、チェックシステムをつくり、それに対して、先ほどの話と関連しますが、行政の内部だけで決めていくということでいいかどうか、ただ件数が多いのでどうなのか。あるいは、例えば国なんかは、国の一者入札の割合ってつまびらかじゃないんですけれども、このチェックに対して事前、事後、あるいは第三者機関、どんなふうな形になっているのかということをお教えいただければと思います。両先生にお願いしたいんですが。

○有川教授 最新の国の一者入札の数値は大体16から17%ぐらいですので、余り東京都の今言われた数字と違わないかもしれませんが、工事は若干それより下回るようです。今のは全調達のパーセントです。ただ、ほとんどそこでずっと数年推移していますので、それでいいかどうかはちょっとあれなんですけど、数字的にはどうもそういった数が今、出ているようなところです。
 それから、もう一つのほうの一者入札に対するチェックの体制は、先ほどちょっと資料でも申し上げたんですけど、駆け足だったんでもう少し丁寧に説明させていただきますと、一者入札のところの5ページのモデルケースとして経済産業省が優良事例として挙げられていますけれども、ここまで徹底してなくても、大体多くの省庁がこれに準じた、あるいは独法もこれに準じたやり方をしておりまして、5ページの取り組みの概要の①にありますように、前年度一者応札案件について、事前にその原因を、あらかじめアンケート調査等もしまして発生原因を分析しているんですが、翌年さらに同様な発注をする場合はそれをもう一回洗い直すような形で、問題を解除するためにはどうしたらいいかということをきちんと自己点検して入札に付すと。2番目にありますように、開札後、契約を締結する前に、やはりおかしい動きがないか、不自然な一者入札になっていないかということを最終的に検証して契約に入ると。
 さらに、事後的に、もう契約したんですけれども、③にありますように、ここが経産省が2段階やっているんですけども、とにかく第三者の目でチェックをしてもらって、これは契約破棄というわけにはなかなかいかないんですけれども、場合によったら契約の変更、それが取り入れられなければ翌期の契約にこのチェックのポイントをまた反映させるという、こういう構造で行われているという状況であります。

○楠教授 私も事前に有川先生の資料をちゃんと読んでコメントすべきだったかもしれませんけども、一者応札の比率云々に関しては、私は個人的には不調もセットで考えないと、その問題の本質ってわからないのかなと思うんですよね。つまり、一者応札が非常に多いんだけど不調が全然ないといった場合というのは、ちょっとおかしいんじゃないかという見方ができるわけですよね。一者に偏っているということは、何かこう入札参加資格とかを絞り込んでいるんじゃないか。ただ、不調が多くて一者も多い場合というのは、需給バランスである可能性が高いんですよね。つまり、需給バランスの結果、不調も多いし、それに引きずられて一者応札も多いという。なので、その率を考えるときというのは、その前後というんですか、その横の部分も見て評価しないと、その一者応札の本質というものがよくわからないのかなと。
 結構、不調が多いんですよね。ただ、問題なのは、不調のケースというのは、再度入札やって、結果が出て、誰かが契約をすれば、その不調であったことというのは情報として出てこないんですよ。なんだけども、実際には不調のケースというのがどのぐらいあったのかとか、あるいは、ちょっと関連で言うと、例えば不落のケースとか、下回ったケース、上回ったケースというのが比率としてはどのぐらいあったのかって統計資料もやっぱり出すべきだと思うんですよね。そういうのが出てこないと、議論のしようがないというふうに思います。
 一者応札の対応なんですけれども、これなかなかやっぱり難しくて、私も幾つかの独法で、独立行政法人でそういうふうな入札契約の監視をやっていますけども、もういろんなことやったんだけど、もうさすがに手がないですって状況にほとんどの独法がなってます。だから、これはもう割り切って、そのまま入札をやるのか、あるいはもう随契に変えるのかって議論しましょうよというふうにいつも提言しているんですけども、それでもやっぱり法令上のとか規則上のということで無理やり競争入札やって、また一者応札。今度は、2か年にわたって一者応札の場合は重点的にチェックしなさいというのが国から来るわけですよね。そうすると重点的にチェックしなきゃいけないんですけども、やっぱり手がないよねって話になってしまうということなんですよね。だから、よくあるのが公告期間を延ばすとかなんですけども、構造的に一者になっているとか、あるいはその地域に一者しかいないとかいった場合というのは、もう随契じゃないのかなというふうに思うんですよね。なんだけども、やはり随契をものすごく慎重になっているというか、一時期その随契自体が悪だというふうに言われた時期があって、そこで随契理由を出すよりは、競争入札をやって、結果こうなんですと言ったほうが、説明が楽だということになってしまうんですよね。
 ですので、有川先生いろいろご指摘いただいたとおりだと思います、対策については。私のほうでは、そのいろんな対策をやるんだけどもなかなか難しいねという話がたくさん出てくるので、そういったものも総合的に踏まえて、いろいろ議論されたらなというふうに思います。
 以上です。

○有川教授 すみません、補足させていただきますと、国のほうのこういう調達改善は平成24年ごろから進んでいて、ちょっと3年ぐらいおくれて27年から独立行政法人も始めているんですが、国のほうはもう一者応札の原因分析をして、発注側でやるべきことはもう手を尽くしたねという感じで、それでも一者入札が続くものについては、事前確認公募を経由して随意契約に切りかえるものも少しずつ出てきているというとこなんですが、独法にその話をすると、まだ独法は、その一者入札の原因分析とかそれに対する排除のための努力をまだ十分行っていないので、随契の議論、随契に行くという議論はもう1年待ってくださいというのが実情のようですので、恐らくまず一者入札についてきちんと手が尽くされたら、次の段階が随契にすべきものはやっぱり随契にしなきゃいけないという状況なんだろうと思いますので、やっぱり対住民、国民に対しては、一者入札に対する対策が十分できた後の随契への転換なのかな、順番としてはそういう、今同時に並行でやっていくのはちょっと早いのかなという感じもするんですけれども。

○事務局 では、飯塚顧問。

○飯塚特別顧問 私たちが今、一者入札で検討しているのは、工事なんですね。ですので、いわゆる工事以外のシステムの調達とか、そういったものであれば、この経産省の①から③までの流れ、前年度の一者応札案件について云々ということが当てはまりますが、工事においては前年度の一者入札案件という概念自体成立しませんので、工事の場合における一者入札に関するチェック方法として、この①から③に当たるようなものというのはございますか。

○有川教授 よろしいですか。

○事務局 はい。

○有川教授 すみません、経産省を出してきたんで工事が余り主にないんですけど、国交省のほうもヒアリングしてますので、ちょっと表現が少し変わりますけれども、要は、同じ契約が続くんではなくて、当該契約が、あるいは当該入札がなぜ一者になったのかというのは、きちんと業者にヒアリングしたりアンケートをして分析して、そして、次の同様な発注の際にはその原因を解除できるような対策を内部で検討して、その対策でいいかどうかというのを第三者委員会にかけて、第三者委員会でチェックしてもらうと。そういった検討結果は次の発注にちゃんとフィードバックしているかどうかを、今度は別案件になりますけど、したがって、同じ案件を引き継ぐんではないけれども、同様の工事、類似の工事については、同じ過ちを繰り返さないようにというようなシステムは同じように働いてるというところなんです。

○楠教授 先ほど資料の中で少し飛ばしてしまったとこなんですけども、そのJVの義務づけというものが、やっぱり一者応札、一JV応札というものを促進してる部分というのはやっぱりあって、その解消というのは一つの手なのかなと思っています。レジュメでいうと17ページですか、JVの独禁法上の懸念というのが書いてありますけども、要は、そのJVを組むときに、やはりどうしても何らかの意味での情報交換ってなされるんですよ。その情報交換をなされると、大体どの業者が大体どういうところを狙っているのかということがある程度空気としてわかると思うんですよ。そうすると、すぽっと何工区かに分かれていて、先ほど先生がおっしゃったように、同時に発注するとかになってしまうと、もう大体どこがどこみたいなものがわかってしまうということが一つ。
 公共工事においては、もう一つ懸念しなきゃいけないところ、留意しなきゃいけないところは、公共工事というのは、その工事をして、あと何も関連するものはないということじゃなくて、さっきの土壌汚染もそうですけど、前工事と後工事とは何らかの意味で、その地区に対して、どこかの業者が何らかの形でかかわっているというのが多いんですよね。そうすると、その次の工事はどこが行うのかというときに、あそこは、あの地区はあそこだよねという島みたいなのができて、それでそういう縄張りみたいなのができてくるって傾向が強いんですよ。ですから、それが一者JVとか一者応札の一つの背景になっているんじゃないかなという、そういったものをどういうふうに解消していくというのが課題だと思うんですよね。
 でも、こればっかりは、業者のほうはあくまでも契約の自由でやっているので、独禁法違反、実際にその違反要件が成り立つような独禁法違反にならない限り、それは自由なんですよね。だからそこが難しいんですよ。それをどういうふうに解消していくのか。できる限りほかのところが入ってくるように促進するのかというのは、これは発注者のほうでどう仕組んでも、受注者のほうでそういうふうな形ですみ分けみたいなものがあると、これはもうなかなか対処しづらいことになりますので、もう強制的にやるしかないですよね、もう業者は、この業者以外とかね。ただ、そうやってしまうと、それこそこれは会計法令に何か抵触するんじゃないかって言われてしまって、不服申立てされる可能性もありますよね、そういうとこのせめぎ合いなんじゃないかというふうに思います。
 ただ、いずれにしても、そういうふうな地区とか場所とかに対するその業者のそういった縄張りというんですか、かかわった以上はそこが自分なんだということが周りもそういうふうに認識してしまうという意味で、競争制限的な構造になりやすいということが背景なので、それにどう対処していくのかということなんでしょうね。あとは公正取引委員会が独禁法をどういうふうにするかという、そういった問題だと思います。

○事務局 宇田顧問、どうぞ。

○宇田特別顧問 一者入札の件で随分議論が進んでいますけども、都の場合は、我々が今、特にその全四千数百件とか5,000件の話をするのも一つだけれども、12月22日の都政改革本部で申し上げたのは、実は、案件の規模が大きいものほど一者入札は大きいですということですね。しかも、それは例えば5億円以上であるとすると、あるいは20億円以上のWTO案件であるとすればするほど一者入札の割合は高くなります。
 それからもう一つは、一者入札で、二者入札、それ以上というふうにしたときに、明らかに一者入札のほうが落札率が圧倒的に高くなりますと、こういうことなんですよね。WTOの時の入札に関しては最低制限がないので、そうなってくると落札率は83%ぐらいまで落ちていますと、こういうことなんです。
 したがって、この一つ、ワイズスペンディングという観点から見てみると、やはりこういう少しグループに分けて、その大口あるいはその5億円以上なのかな、わからないですけども、一定量以上のところについては、これは数十件とかそういうオーダーですから、これはもう案件ごとに見ると、事前にしっかりと見ていくというようなことでフィードバックをしていくということも可能なんではないかなと。そのかわり、例えばその5億円以下のかなり膨大な数がありますので、こういうようなところについてどうするかというあたりは、ちょっと分けて議論をしていく必要があるんじゃないか、こんなことをちょっと考えているんですけども、まず、このあたりのこのワイズスペンディングの観点からしてみると、セグメントに分けて考えるべきじゃないかなと、これをどうごらんになるかということと、それからもう一つ、元施工だとか、やっぱり縄張りというのがありますと、先ほどイニシャルと、それからその後のメンテとかパッケージにできないかというようなお話があって、民間だと割と常識的に複数年契約ということでそういうパッケージにしておいて、これ落札すると3年苦しいなとか、そういう状況のもとでちゃんとした実質競争環境というのをつくる場合があるんですけど、公共の場合にはなかなかそういう予算上の問題とか、多分そういうこともあるんでしょう。この場合に、元施工あるいはその唾がついているやつというかものについて、先ほどのようなメンテナンスを含めたパッケージ化は可能なのかということですね、あるいは少し大口化は可能なのかと。それから、一方では少し大口過ぎて、大口の人たちしかとれなくなると。マリンに得意な人たちの数は限られているのに、そこでJVをやるがゆえに数が余計限られるといったようなケースもある、このあたりをどう考えるかというあたりは、ご意見をもしいただければありがたいというふうに思います。

○楠教授 じゃあ、私からいいですか。

○事務局 どうぞ。

○楠教授 やはり全部の案件というものを全部見るのは大変ですから、もう象徴的な大きな案件で、一者応札になってしまったらそれだけ大きな影響がありますから、そこに切り分けて議論するというのは賛成です。ただ、大きな案件だと、そういうふうに一者応札になりやすいんだけども、小さな案件だとなりにくいといったところで、じゃあ分割すればいいのかって話になると、それこそ30億のものを6分割したら、WTOの問題が出てきますよね。そういうものをあえて国際入札かけるのかって議論にもなってくると思うんですよね。
 だから、その辺は、分割するということについては、分離分割というのがいいのかどうかって議論がありますけども、その単純に分割するというのが妥当かって、ちょっとわからないところがあります。
 そういうふうな、その具体的に一者応札に対応するための方策というのはいろいろあると思うんですけども、やはり最低制限価格というものがやっぱりないとなれば、やはり価格の競争になる、どうしても落としたい業者が落とすということで、私はちょっと追加しなきゃいけないのが、最低制限価格と低入札調査基準価格で、原則は下限を設けないことなんです、法令上の。だから、低入が原則で、最低制限が例外ではなくて、原則は下限を設けない、例外が低入で、その例外が最低制限価格というふうな認識なんですよね。
 先生、何か。

○有川教授 顧問のご質問に全部答えられるかどうかわからないですけども、3点ほどちょっと答えたいと思います。
 一つは、一者入札のやり方を全体としてやるんではなくて、ある程度カテゴリー別というお話なんですけれども、国の場合は、工事以外の情報システムとか物品購入とか役務とか、もろもろのカテゴリー別に一者入札になる原因が違うんじゃないかという認識にやっと至りまして、カテゴリー別に先ほどのたくさん考えられている原因を少しずつ張りつけて整理して、その契約の種別というんですか、カテゴリーごとに特にチェックを重点化するというような方向が出てきています。ただ、工事をある程度でまた分けるという考えまではちょっと至らなかったんで、今のお話を伺うと、場合によると、建築とか土木とか電気とか、そういった工事種類、あるいは工事の規模別にも一者入札の原因もあり得るかもしれませんので、そこのところはちょっと新たな研究課題なのかなというふうに思います。
 それから、パッケージ、本体とそれからメンテに関してのパッケージは、実はもう国のほうは平成18年の、大きく競争化しなきゃいけないという大きな流れの中で、国庫債務負担行為を適切に運用しなきゃいけないという認識がやっと明確になりまして、平成18年から国庫債務負担行為の複数年契約を使いながら、本体とパッケージになるメンテは予算をちゃんと獲得して、一体で複数年契約をやるようにということを財務省通知で出されまして、多くそれは運用されるようになっております。
 それから、先ほど大口化することによって一者入札が出てくるというのは、去年の防衛省の例もありますように、必要なものの大口化というのは、統合というのはあり得るんだろうと思いますけども、何ていいますか、どこか特定のもののところを核にして、無理やりくっつけちゃうと、逆にそれが競争を阻害することがあるので、これは統合するのがいいのか、分割するのがいいのかというのはもうケース・バイ・ケースなんですけれども、やはりそれぞれ合理的な理由を見つけながら、統合を求めたり、分割を求めるということになるんだろうと思います。

○宇田特別顧問 ありがとうございます。

○楠教授 すみません、1点追加で。

○事務局 はい。

○楠教授 追加させていただきますと、やはり予算制約というのもちょっと考えなくてはいけなくて、ある工事をするときに、この予算しかとれなかったということで、その予算をある予算の枠組みの中に、本当だったら全体をつくりたいんだけども、その一部だけをまず発注して、後で次の年度の予算でまた追加工事をやっていくってケースって、ほとんど一者入札です。ですから、そういうふうな公共工事において、複数年のパッケージみたいなものというのはどうなんだろうというのはあって、一般的には、やはりその年度の予算でつくれるものをつくって、もし仮に、例えば資材とかの高騰とかで、もう予算の枠に入らないとなったら、そもそもその一部をつくる、本体のうちの例えば8割の部分をつくって、残りの2割は次の年度でつくるという、結構発想強いんですよね。ですから、そういうことをやってしまうと、次の年度の後の追加工事の部分は、恐らく一者応札ということで避けられない。それをどうやって避けるかなんですけども、さっきのメンテナンスの、要はシステム構築とメンテナンスを何年間でという議論と同じことが言えるのかということなんですよね。全体というものを2年間契約で全体をつくるって予算がとれるかという、その辺がやっぱり課題になってくるのかなというふうに思います。

○事務局 五十嵐部長、どうぞ。

○五十嵐財務局契約調整担当部長 有川先生にちょっと2点だけ確認させていただきたいんですが、先ほどからJVの義務づけみたいな話があって、東京都のほうは数億円以上のある一定の金額以外はJVを義務づけているというようなことをしているわけですが、国のほうの状況は、もう義務づけとかそういうものは一切ない、そんなような状況なのかどうなのか、それが一つ。
 それからもう一つ、先生のほうでお時間なくて飛ばされた資料の中、最後から2ページ目のところに予定価格算定審査というのが何かやられているというのがあるんですが、これは具体的にどんなような体制で、どんなようなことを審査されているのか、それを参考に教えていただければ大変ありがたいと思います。

○有川教授 1点目の国のそのJVの関係は、私も必ずしも十分承知はしていないんですけれども、恐らく機械的にJVじゃなきゃだめだというような制度はつくってないはずなんで、恐らく工事の履行の確保のために、何か合理的な理由がある場合はそういうケースもあるんだろうと思いますけども、一律にJVということは聞いたことはない。
 それから、2点目のその原子力機構で予定価格の審査というやつは、これはもともと自分のとこでチェック体制ということで、一定規模の予定価格についてはある程度チームを組んで、担当者だけではなくて、それ以外の方たちの内部の目で検証するという仕掛けをつくったようですけれども、それを今度は関係法人との契約とか、特定のものについてはさらに金額を下げて予定価格のチェックの仕方を強化するという形なんですが、どういうふうなことをチェックするかというのはなかなか一言では言えないんで、ちょっと、先ほど、これまた資料を飛ばしたんですけども、2ページをちょっと見ていただきたいんですが、2ページは、地方自治法施行令と違って、国の場合、予決令で、2ページの一番右側にありますように、予定価格をつくる場合は、取引の実例価格、需給の状況、履行の難易、数量の多寡、履行期間の長短等を考慮してと、ある程度キーワードが書いてあるんですけれども、しかし、左側の後ろから2パラを見ていただきたいんですけれども、予定価格の算出については、たとえ規定上においてどんなに詳細な基準が設けられても、やっぱりそれだけで、どんな場合にそれが当てはめられる、どんなときにもパーフェクトにそれが使えるわけではないので、実際はその時々に受ける物価の状況、その内容となる数量とか工法、そういったもろもろにかかわってきますので、担当者が日々研さんして、そういったデータをきちっと収集して、かつ担当者間でそれを情報を共有して、それらを内部でチェックする、統制して、そしてそれらをモニタリングするということなんで、先ほどお話をしました予定価格の調査、確認というやつは、恐らく内部統制のチェックシステムとモニタリングシステムをある程度の金額について強化しているというふうに理解していただければと思うんですが。

○事務局 それでは、ちょっと時間も迫ってきていますので、もし何かありましたら、最後のお一方で。
 飯塚顧問。

○飯塚特別顧問 先ほど楠先生、総合評価について、週休2日制を評価するみたいなことを、そこまでその技術点の中で評価することもあるんだみたいにおっしゃって、もうそうなると、週休2日制を評価するなんて、それが価格点に比べて何億円の話なのかというようなことは、答えのない世界だろうと思うんですね。しかし、答えのない世界でも積み上げていこうということであるとした場合に、一番大事なことは、その価格点とその答えのないものを積み上げた技術点の比率だと思うんです。有川先生の資料は1対1とか1対3とかありましたが、あれは工事ではありませんので、工事において、何対何がそのガイドライン的なものなのか、例えば、平成17年の総合評価の活用ガイドラインというのが出されていて、あのときは価格点100に対して技術点は10から30というふうに書いてあったと。それが、平成19年には、そういうその数量的な記載がなくなっていると。国は、全部を総合評価しようとして、工事とか契約、総合評価しようとしている中で、その一番大事な価格点と技術点の比率をどうするのか。
 例えば、私たち、有明アリーナについて、今でも覚えています。価格点は0.11です、技術点は60点つくんですよ。60と0.11を足すなんていう算数はナンセンスですが、1対1、60対60、1対1で考えるとそんなふうにもなってしまうと。そのあたり、工事における価格点と技術点の比率をどういうふうに考えるのか、最後にお教えいただければと思うんです。

○楠教授 社会政策の観点を公共工事の総合評価に入れるというのは、非常に私、懸念しているんですね、実は。というのは、本来であれば、議会、国会でそういった社会政策のための予算を取って、それを実現する話ですから、それを議会を通じずに、発注機関がその裁量を、そういったものを実現するためにお金を使うって話になるわけですよ、これは許されるのかって話ですよ。それは、もちろん法的にどうかの問題ではなくて、そもそも責任者が違うんじゃないのという懸念を持つわけですよね。ですので、価格点と非価格点という議論の前に、そもそもそういうものを議会できちんと議論しない状態でその予算を使うというものでいいのかという問題意識を私は持っています。
 技術点に関して言うと、これは本当に永遠の課題なんですけども、一つ前提としておかなければいけないのが予定価格というのがありますから、予定価格を超えることはないわけですよね。ですので、その価格が全く重視されてないというわけではない、予定価格は必ず守んなきゃいけないということで、際限なく上がっていくということはないわけですよね、その技術点をどんなに評価しても、そういうことがあると思います。
 ただ、1点に対して技術が何点分なのかと、逆に言うと、技術の1点が価格の幾ら分なのかということは、これはもう発注者がきちんと説明責任を果たすしかないんですね。こういう形で点数を組みましたと、これだけの技術について、我々はこれだけの額を使ってもいいんですということを常に言い続けるしかないわけですよね。それが不透明であることが問題で、それが透明にされていれば、こういった先生方、有識者の先生が、これはおかしいんじゃないかと、これは不当じゃないか、バランスが悪いんじゃないかということを常に批判される立場になると、そうすると発注者のほうでも、それは批判されないように、みんなが納得できるようなバランスにしようって議論になると思うので、必然的に適正なウエートになってくる。それが価格点が10点なのか、価格点が10%なのか90%なのかというのは、それはケース・バイ・ケースです。だけども、そういった形の適正化というのは透明化に結びついている、これも有川先生ずっとおっしゃっていましたけども、そういう問題だと思っています。

○有川教授 2点とも非常に大きな問題で、附帯的政策というふうに呼ばれておりまして、公共調達をやるときに、総合評価などの価格以外の点数のところで、中小企業政策が一番先駆的なポジションにあるんですけど、その後、地場産業政策、地域要件など、それから社会保障政策とか、あるいは環境政策とか雇用政策とか、そういったもろもろのやつを今、最近、その総合評価の加点のところへどんどん入れようというふうな流れになってきていますけども、余りにもそれが何といいますか、融通無碍に入ってくることを防止するために、27年の1月の政府調達改善の指針のところで、新たにこういった公共調達の中に手段として附帯政策をくっつけるときは、財務省と内閣官房のその調達改善部局と、事前協議をすると、承認という言葉は入っていませんけども、そこで了解を得る必要があるということになりまして、いたずらに附帯政策がふえることを、一応国のほうは歯どめを。ただ、法令に書いているわけではないので、適切に運用されるかどうかをちょっと監視する必要があるんだろうと思いますけども、そういった流れが、問題意識を持って進められております。
 それから、総合評価のことは、顧問ちょっと誤解があるように思うんですけど、1対1とか1対3というのは、その評定に基づいて例の加算方式の算式を使うものですから、結果的に技術点と価格点とで圧倒的な差がつくというのは、もうご指摘のとおりなんです。それは、あの例の算式、1マイナス何とかかんとかという算式を入れちゃうと、結果的には価格について大きく評価が低くなるということなんで、あれの計算なんですけども、大体1対1の加算方式、東京都の場合は、工事は除算でなくて加算というふうに理解しているんですけども、加算方式で1対1の場合ですと、大体1点が予定価格の0.5%に相当するんです。ケースによって多少動くとは思うんですけども、ですから、これが1対3になると、予定価格の1%から2%ぐらいに上がってきまして、もしその物件、案件が10億円の案件ですと、評価する人がちょっと1点動かしただけで、一生懸命積算した人の1,000万を吹っ飛ばすということになりますので、先ほど言ったように、その価格以外の要素をつける人たちが会計責任を負わない人がやるということは、最も注意しなきゃいけないという、そういう問題意識なんであります。

○事務局 ありがとうございました。
 時間にもなってまいりましたので、本日の議事は以上としたいと思います。
 限られた時間ではありましたけれども、一者入札の対応ですとかチェック体制などについて、有意義な議論を行うことができました。皆様ありがとうございました。本日の議論を今後の都の入札契約制度改革にも生かしてまいりたいと思います。
 最後に、事務局から1点、事務的な連絡を申し上げます。本日の会議の議事録ですが、準備が整い次第、東京都のホームページに掲載したいと思いますので、あらかじめご了承ください。

 5.閉会
○事務局 以上をもちまして本日の意見交換会を終了いたします。皆様どうもありがとうございました。

12時14分閉会

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