第2回市場問題プロジェクトチーム議事録

平成28年10月25日(火曜)
都庁第一本庁舎7階大会議室

午後4時00分開会


○事務局(池上) ただいまより、第2回市場問題プロジェクトチーム会議を開催いたします。
 本日の会議の進行を務めさせていただきます、市場問題プロジェクトチーム事務局の池上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は多くのプレスの方々に来ていただいておりますが、本日の会議の様子は、最初から最後まで公開しますとともに、あわせてインターネット中継を行っております。
 続きまして、本日の配布資料の確認をさせていただきます。机上に置かせていただいていますが、順に、会議次第、出席者名簿、配席図、会議資料5点。資料1「第2回市場問題プロジェクトチームのスライド資料」、資料2「豊洲市場配置図」、資料3「株式会社アトリエ・ラ・クレ提出資料」、資料4「株式会社日建設計提出資料」、資料5「第3回市場問題プロジェクトチーム会議の課題」です。
 何か不足等がございましたら、事務局までお声がけください。
 議題に入ります前にプロジェクトチームのメンバーをご紹介します。順にご紹介しますので、その場でご起立の上、一礼のほど、よろしくお願いいたします。
 まず、座長の小島敏郎専門委員でございます。
 続きまして、井上千弘専門委員でございます。
 次に、菊森淳文専門委員でございます。
 次に、佐藤尚巳専門委員でございます。
 次に、竹内昌義専門委員でございます。
 次に、時松孝次専門委員でございます。
 次に、森高英夫専門委員でございます。
 次に、森山高至専門委員でございます。
 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議題に入ってまいりますが、これからの進行は小島座長にお願いしたいと存じます。
 小島座長、よろしくお願いいたします。

○小島座長 それでは、第2回の市場問題プロジェクトチーム会議を始めたいと思います。
 まず、本日のテーマについて資料を用意しておりますのでご覧ください。
(資料1 2ページ参照)
 今回は、建物の構造安全性という極めて専門的な話を議題に上げました。専門的な話を、聞いている人にわかりやすくしていただきたいということが、今日、出席の方々への私からのお願いです。
(資料1 3~4ページ参照)
 私は、愛知県の長良川河口堰の開門調査の座長も務めていますが、河川工学や水のことをいかに県民に知らせていくかということに苦心していました。
 このようなパンフレットを作成しましたが、極めて専門的な言葉を普通の言葉で伝えるようにしました。専門家にとって通常使っている言葉は、県民や都民、普通の人にとってはほとんど外国語ですので、やはり日本語で話していただきたいということが私の希望です。どうしても専門的になる話は、「これは専門的な話です」と間を置いてお話ししていただきたいと思います。それでも普通の人にもわかるような言葉で、専門家だけの間で通用する言葉ではなく、通常の言葉で話していただきたいと思います。
 この間、2回ほど、私は、論点を整理していたり、本日お越しいただいている方あるいは専門委員の方々にも、普通の言葉でわかるようにお話をしていただきたいというお願いをしてまいりました。やはり専門家だけが納得していればいいという時代ではなくて、これを聞いている築地の業者さんや一般都民が、なるほどそういうことなのか腑に落ちるような議論をしていただきたいと思っております。
(資料1 6ページ参照)
 それでは、本日の検討課題は3点あります。1点目は、押さえコンクリートの厚みの問題です。2点目は、積載荷重の問題です。3点目は、基礎ピットの耐震設計上の評価についてです。
(資料1 7ページ参照)
 まず、防水押さえコンクリートの厚さが、10mm、150mmと異なっている問題です。赤い字の「検討課題①」をご覧ください。防水押さえコンクリートの厚さが10mmではない。構造計算書では10mmとなっていましたが、設計図及び実際は150mmとなっておりますので、そうなることで、重量が平米当たり300kg重くなります。再計算しなければいけませんが、そうすると、支えている床の構造安全性・建物の耐震安全性にどう影響するかということが第1点です。
(資料1 8ページ参照)
 このスライドは、前回見せた、構造計算書では10mmとなっているものです。
(資料1 9ページ参照)
 こういう形で、150mmとなっていたということです。
(資料1 11ページ参照)
 2点目の課題は、床用積載荷重が平米当たり700kg。違う単位ですが、6街区1階の水産仲卸売り場が平米当たり703kgとなっています。このことについて、築地の仲卸業者の方々から、赤い字の「検討課題②」に、床用積載荷重として700kg/㎡は仲卸売場として不十分ではないかという疑問が寄せられています。床の強度は大丈夫かということです。
 これに関連して、地震のときの積載荷重としてはどうなのかという、専門的な見地からの議論があります。
(資料1 12ページ参照)
 ここは、森高専門委員にご説明をお願いします。

○森高専門委員 森高でございます。
 これは少し専門的な話になりますが、積載荷重には、床を設計するための積載荷重、架構設計用という、メインの梁や柱を設計するための積載荷重、地震力を算出するための積載荷重があります。今ご議論になっているのは、床用の積載荷重です。これは、基本的には、例えば、この事務室であれば、2,900N/㎡、重量単位に直すと、平米当たり300kgの重量が床にフル満載の状態を想定して床を設計しています。実際は、フル満載ではなくて満載状態ではない、隙間もありますから、それを低減して梁や柱を設計します。これは架構設計用です。地震力算定の場合も、実情に合わせて数値を低減している形で、これは、我々が日常、積載荷重を設定する際の値です。

○小島座長 ありがとうございました。
(資料1 14ページ参照)
 3点目です。地下ピット部分の耐震設計上の評価についてです。地下に空間がありますが、いわゆる地下ピットはいろいろな用途に使われています。基礎をつくるという意味で「基礎ピット」と呼ばれたり、配管を維持管理するための空間としては「配管ピット」ですが、豊洲市場の地下ピットは重機の搬入口なども設置されていますので、経過からすると、土壌汚染対策用の工事ピットにも利用されると考えられております。ということでいろいろな用途があるので、4.5mの高さになっています。
 本日は耐震設計上の問題ですので、この基礎ピットをどう評価するかということで、地上に接しているレベルから計算するのが現在の豊洲の構造計算で、これに対して問題提起されている高野一樹さんからは、ピット下の砕石層から計算すべきではないかということです。
 さて、この基礎ピットについて、森高専門委員からご説明していただきます。

○森高専門委員 前回から「地下ピット」とか「地下」という言葉が使われていますが、実際、ここは建築基準法上の地下階ではありませんので、「基礎ピット」もしくは「地下ピット」と言います。
(資料1 15ページ参照)
 このスケールは、柱と柱の間が約12mで、基礎ピットの天端から1階スラブ天端までが4.5mです。1階の柱を支えている、「フーチング」と書いてありますが、これは基礎です。これが3m500角で高さが約4,500の大きなフーチングがあります。建物全体を鋼管杭で支えている構造になっていまして、ここの空間が基礎ピットになります。この場の議論ではこういう形で進めたいと思います。
(資料1 6ページ参照)
 前回9月29日の第1回市場問題市場チーム会議で、今回の市場問題プロジェクトチーム会議のテーマは「建物の構造計算」という名称にしていましたが、これを「豊洲市場の建物の構造安全性の課題」という名称に変えさせていただきました。それには理由がありまして、「構造計算」という言葉だけがひとり歩きして、構造計算そのものが構造設計のように捉えられるのは、構造設計者にとっては少し違うのではないかということで名称を変えさせていただきました。
 少し時間をいただきまして、改めて、構造設計はどのような仕事なのかを、恐らくこれからの議論の参考にもなると思いますし、皆さんにも理解していただくために、簡単に説明していきたいと思います。よろしくお願いします。
(資料1 17ページ参照)
 建築を設計する専門家として、通常は、意匠設計者、構造設計者、設備設計者という3者の専門家が協働して建築の設計を行います。意匠設計者は、デザイン・空間の設計、プロジェクト全体のマネジメント、設備設計者は、快適な居住性・環境配慮、電気・空調・給排水・通信などの設計を行います。
 構造設計者は、「構造計画」と記載していますが、与条件を勘案しながら、その建物に合った最適な骨組みを設計するもので、これが構造計画です。それに、耐震・安全性のグレードを決めて、経済性に考慮した骨組みを設計することが構造設計者の役割です。
(資料1 18ページ参照)
 もっと詳しく言うと、建築物の屋台骨、いわゆる構造体を担うのが構造設計者の役割です。繰り返しになりますが、構造計画を立て、それを詳細設計し、構造計算による安全性・妥当性を確認して、その後、構造設計図書を作成する、これが構造設計者の業務です。
 構造計画とは何かというと、様々な条件を考慮して、建築主の要望である予算や工期、建物用途、意匠的なデザイン、地盤の条件、気候、材料、耐震性、耐火性、居住性、環境等たくさんの条件を考慮しながら、最適な骨組みを設計することが構造設計者の役割です。
 構造計画が出来上がり、骨組みがある程度設計できると、今度は構造計算によって構造計画で考えた骨組みの強度や安全性を確認するという業務を行います。確認した後、構造設計図書を作成し、確認申請を出します。そういうことが構造設計者の主な業務です。
(資料1 19ページ参照)
 構造計算とは何かを説明しますと、架構システム――躯体の骨組みや基礎の構造を立案して、これの妥当性・安全性を確認するわけですが、通常は、複雑な骨組みを単純な線材にモデル化して、コンピュータを利用して構造計算を行い、安全性を確認します。計算の種類はいろいろありますが、一般的には許容応力度計算で、これも専門的な言葉ですが、こういう方法で一般的に行っています。
 ちなみに、耐震設計の考え方として、通常、構造設計者は2段階の地震で検討しています。一つは、震度5弱程度の揺れで「中地震」と言っていますが、この中地震では建物は損傷しないことを目標に設計しています。もう一つは、震度6強以上の大地震については、建物が大破・崩壊しないことを確認します。ただし、一部損壊はやむを得ないという前提で設計しています。
 右側にポンチ絵を描いてありますが、横軸は地震が起きたときに建物が水平方向に変更する軸で、縦軸は建物が抵抗する力です。建物に地震力が高まってくると、あるところから耐力が増えずに変形だけが進みます。こういう状況は、建物に結構損傷が出ているということで、中地震の場合は、この直線の範囲内におさめて、大地震は建物が崩壊に至らないようにチェックすることが耐震設計の大雑把な考え方です。
(資料1 20ページ参照)
 耐震安全性にはグレードがあります。通常、建築基準法で扱っているものは基準級で、「極稀」と書いてありますが、震度6強地震の場合は、基準法では人命保護が優先されますので、中破・大破ぐらいは許容しています。地震の後は、ある程度規模の大きな修復が必要になります。
 上級になると、ある程度の機能を確保する必要があるので、震度6強の地震が起きても被害は軽微にとどめ、軽微な修復で建物を使えるようにしようというものです。特級は、基本的には、大きな地震が起きても本当に軽微な被害で、主要機能は常に確保しようというものです。
(資料1 21ページ参照)
 豊洲市場は上級に相当し、分類ではⅡに対応しています。目標水準としては、「大地震動後、構造体の大きな補修をすることなく建築物を使用できることを目標とし、人命の安全確保に加えて機能確保が図られている。」としています。その数字は、通常、基準法で言う1.0よりも25%割り増しした1.25の耐力を目標に設計されます。
 以上です。

○小島座長 これが本日のテーマです。
 このことを議論するということで、ご説明にお呼びしております。ご紹介しますので、その場でご起立の上、一礼のほどお願いします。
 まず、問題提起者として、高野一樹さんでございます。

○高野氏 アトリエ・ラ・クレの高野という者です。よろしくお願いいたします。

○小島座長 豊洲の建物の設計をされた日建設計から、富樫亮さんでございます。

○富樫氏 日建設計でエンジニアリング部門統括を務めております富樫でございます。よろしくお願いいたします。

○小島座長 常木康弘さんでございます。

○常木氏 日建設計で構造設計の代表を務めている常木康弘でございます。よろしくお願いいたします。

○小島座長 五十君興さんでございます。

○五十君氏 五十君興と申します。このプロジェクトのチーフを務めております。どうぞよろしくお願いいたします。

○小島座長 本日はこのメンバーで議論を進めてまいりますが、発言者はメインテーブルに座っている方々にお願いいたします。後ろからメモを出すことは結構ですが、発言はメインテーブルに座っている方に限らせていただきたいと思います。
 もう一つ。日建設計は、東京都との契約で細かな契約内容、様々な事柄について守秘義務がありますが、このPTの審議にかかわる範囲では守秘義務を解除しておりますので、本日のPTの議論については、そういうことでお話しいただきたいと考えております。
 では、まず高野さんから、ご説明と、あわせて日建設計へのご質問も含めてお願いしたいと思います。

○高野氏 よろしくお願いします。高野です。
(資料3 1ページ参照)
 先ほどから挙がっていますように、今日は主に3つの課題を確認していきたいと思います。
 まず、ア)として、4階の仕上げコンクリート厚との齟齬です。これは確定した話なので、改めて最終的にどう処理されたかの確認だけです。
 イ)は、積載荷重の設定についてです。もともと市場の関係者が積載荷重の見積りが少ないので、使用上、床の耐力がどうなのかということを心配されていましたので、この辺の設定内容を再度確認したいと思います。
 ウ)として、これまでは「基礎ピット」という呼び方をしていたのでしょうか、実際の市場では「地下ピット」が正式名称らしいのですが、そのピット部分が構造解析をしていく上で、しっかりと周囲の土に埋まっている状態であれば特に心配もないのですが、もし、緩い状態で、1階の床も地震が起きたら横にずれるということであれば、計算上のモデルは1層分増えた状態なのではないかという、モデル化の設定についての確認です。
(資料3 2ページ参照)
 基本的なこととして、私たちが構造計画・構造設計をどのようにしていくかということは、先ほど森高専門委員からもご説明があったとおりです。前提として、先週も地震が起きたばかりですが、私たちが住む日本は、大きな4つのプレートがせめぎ合う境界に載っている島国です。大きな地震も、遠い世界の話ではなくて、ここにも代表的な大きな地震を並べましたが、いつどこに起きてもおかしくない状況です。そういう前提で、我々は、特に構造設計者は、きちんと機能を担保するための仕事をしていかなければいけないと思います。
 豊洲は埋立地で歴史が浅い、相対的に土がやわらかい土地です。また、今回、地下に盛り土をしている、していないという問題がありましたが、敷地の条件で、特に今回は、中が掘れていて、外は土が盛ってある。そういう条件に合わせた架構をきちんと検討しているのかということがあります。
 あとは、卸売市場という用途で、毎日たくさんの魚介類や人が出入りして、それを処理していくという機能上の要件もきちんと押さえて、私たち構造設計者は仕事をしなければいけません。
 今回、この建物は5,000億円、6,000億円という膨大な税金を使って建設しているわけですから、そういう基本的な条件をきちんと押さえた内容にしていかなければいけない、そういう責務がある仕事だったと思います。
(資料3 3ページ参照)
 早速、仕上げコンクリート(押さえコン)の厚さの問題に入ります。図面と食い違いがありました。計算書上は1cmの押さえコンクリートの重みしか見ていなかったものが、最終的には15cmになって、当然、その分増えています。途中の段階で、これはただの書類上の誤記であるとか、最終的には屋上の植栽が軽くなったから大丈夫だというお話がありましたが、申請時の状態、そごが発生した時点に立ち戻って、実際はどうだったのかということは検証しなければいけないと思いますので、その辺、日建設計のご説明をいただきたいと思います。
(資料3 4ページ参照)
 次に、積載荷重についてです。
 今回、私が目にしているのは仲卸棟の設計図書が中心ですので、これを中心に考えていきますが、たまたま隣の卸売棟の荷重表も目にする機会がありまして、設定についてあまりにも差が大きいのではないかという印象を受けました。具体的には、仲卸棟の積載荷重は、水槽や人、品物(魚)、運ぶ機械、ターレなどがたまに通ったりするゾーンもあるようですが、それらを合計して700kg/㎡の設定です。
 ところが、隣の卸売棟の活魚スペースでは、固定荷重のほうに水槽600kgを見た上で、さらに、物・人、動かす機械類の積載荷重を別に1トン見ている。これはかなりのサイズではないでしょうか。
(資料3 5ページ参照)
 具体的なイメージとして、その重さを絵にすると、これだけ違うことになります。左側が仲卸棟の700kgで、大体あのくらいの人と物が載ります。そこには、大きな水槽を載せられるのか、ターレが走れるのかという心配になっています。一方、右側は、卸売の「活魚」です。水槽の重量も最初から載っていて、1トンあればターレが走っても基本的に問題ないのではないかというイメージ図です。
(資料3 6ページ参照)
 今のことは、常時の荷重についての床の検討用の重さですが、地震時の積載荷重もありまして、これも印象としては過小なのではないかと思われます。具体的にどうなっているかというと、今の仲卸棟の荷捌きスペースは250kg/㎡です。同じ建物内に見学者通路がありまして、ここの設定は地震時で210kgになっています。そうすると、用途的に、たくさんの人・物があると思われる荷捌きスペースと見学者通路の差があまりなくて、本当にそれでいいのでしょうか。
(資料3 7ページ参照)
 具体的なイメージの絵が載っています。二百数十kg台だと大人4人くらいの重量です。これで本当に仕事スペースの積載荷重がこれで足りているのかという疑問があります。
(資料3 8ページ参照)
 まとめますと、上段が床検討用の荷重イメージ、下段が地震時の荷重設定です。
 ちなみに、卸売棟の活魚スペースは地震時の荷重をどのくらい見ているかというと、約350kgです。一般的に倉庫の類だと、どのような倉庫であっても、通常は最低でも400kgくらい見ましょうという通則もあるので、そういうことを考えると、地震時の積載は250kgで本当にいいのかというのは、きちんとした裏付けがあるのかということをまず説明いただきたいと思います。
(資料3 9ページ参照)
 今までの話は、床の上にならした状態の荷重での話ですが、実際は、ターレやリフトなどの走行機器、これはタイヤや車輪で重量が床に集中的にかかる場合があります。今までの話は、例えば、白い板が床だとして、黒いものが荷重物。ならした状態であれば、床はこの程度のたわみですね。しかし、もし、車輪の集中の荷重であれば、たわみはこのように大きくなります。こういう状態の荷重に対しても本当にチェックできているのか。
 さらに大げさな話をすると、突き上げるような地震が起きると、どーんとこういう状態になるわけです。ですから、こういうことまできちんと考えられているのか。
 地震時の上下動の話は、床だけではなくて、今回、12m、14mという大きなスパンになっていますから、こういうメインの骨に対してもきちんとした検討をされているか、その辺を確認したいと思っています。
(資料3 10ページ参照)
 今までの荷重の問題は、明確な根拠を示していただければそれでいいと思います。
 問題は、最終的に地震の検討においてということで、恐らく、今までの日建設計の構造計算のモデルの範囲であれば、誤差の範囲かなという気は私もしています。しかしながら、地下の扱いの話が出ていましたが、地下の扱いの見立て、モデル化、ここの考えが変わってくると、地震力の算定も大きく変わってくるので、そこを確認したいと思っています。
 いずれにしろ、私が今議論している話は、申請内容での再確認をしたい。どういう申請をされているかというと、よく起きる中地震の際には、許容応力度設計という設計書で構造部材の耐力をチェックします。そして、稀に起きる大地震、震度6強くらいになると、大きな変形はあるけれども倒壊はしない。そういうチェック、いわゆる保有耐力の検討をしていますが、そのルールの中での確認をしていきたいと思います。そこはよろしくお願いします。
(資料3 11ページ参照)
 今、地下空間はどうなっているかというと、左側の図で、右下がりの赤い斜線が本体の骨組みです。「基礎梁」と書いてあります。左側のL字状の青い右上がりの斜め線、あれが擁壁です。今回、この建物では、擁壁と基礎梁の間に隙間があいています。そこには発泡樹脂の板がはまっています。これは色が違いますが、実物の素材としてはこういう発泡材で、実際は水色の25mmの板をかませているようです。要するに、構造としては縁が切れた状態です。この間の説明では、深さで言うと、今、水が溜まっている底から1階の床の上まで約5mありまして、擁壁の高さが4m、そうすると、約8割埋まっているのだから地下として見ていいということを、この間の予備の話し合いの際に伺いました。
 確かに、立断面だけを見るとそうも見えますが、これを平面的に見ると、今、水が溜まっているところは構造的に全く何の拘束もない、砕石や作業上、便宜的に平らにしている捨てコンだけなので、本来の基礎の面積比率で言うと、大雑把な計算ですが、建築面積に対してせいぜい15%くらいしか地面に接触していない。なおかつ、杭は直径1m程度の太さですが、実際に地盤と絡んでいるのは杭の断面だけです。ですから、これが本当に土と建物が絡んで拘束されている部分はどこかというと、杭の頭くらいしかないわけです。ですので、そこできちんとしたモデル化を設定しなければまずいのではないかということを、私は気にしています。
(資料3 12ページ参照)
 その上で、日建設計さんがどういうモデルで計算していたかというと、これは、簡単な説明にするために地上は2層の建物にしていますが、要するに、基礎梁がほぼ地面の正面とそろっていて、そこは動かないというモデルでまず計算している。そうすると、基礎は動きませんから、上だけですね。こういう状態です。実際は、どういう理由かはわかりませんが、中に空洞がある。確かに、周囲の地面の拘束がきちんとしていれば、ここは動かない。そうすると、見かけ上は同じ動きだからいいではないかということになるかと思いますが、今回のこの土地は、盛り土も若い、盛ったばかりで大した拘束力も期待できないとなると、実際は地盤も緩いですから、やわらかい土だと。そうすると、どうなるかというと、見てのとおり、ピット層も動くわけです。そうすると、これはどういう状態かというと、実は、ないのと同じです。赤く塗ったものは他人のピットの擁壁です。ですから、押し出したら動いてしまう。そういうモデルで検証しなければいけないのではないかということを言いたいわけです。これを具体的に、専門的に、今回、協力者の今川先生にも見てもらっています。
(資料3 13ページ参照)
 それから、地下のフレームが、基礎部分がすごく固いという前提で日建設計さんは説明されていますが、実際は、5mの高さで、基礎も、柱的に挙動します。それと、それをつないでいる基礎梁、これも太いですが、基本的に、曲げると変形しますから、完全な剛体ではなくて、あくまでも弾性体なので、そのやわらかさ、固さに応じて力の配分が変わってきます。
 ということは、確かに1階の床面は一つのものとして動くでしょうけれども、杭のレベル、ピットの底、水が溜まっている箇所の土がぐずぐずになりますから、土の固さに応じた杭のバネ、横方向のバネに応じた部分しか力が発生しない。
(資料3 14ページ参照)
 そうするとどうなるかというと、これはモデルですが、実際はフーチングが下に飛び出ていて、太い横方向の基礎梁がある。しかし、あの形なりの固さによって力の配分が変わってきます。これは電気的に勝手に想定したモデルですが、例として計算してみます。
(資料3 15ページ参照)
 小さくて見にくいのですが、杭が2本あるところ、端の1本だけの杭の部分、そこは基礎梁のつながり方も違いますから、結果的に真ん中に力が集まって、端は力が少ない傾向があります。それを再確認しました。杭のレベルでも変位がそれぞれ違うことを確認しています。そのように、基礎部分が完全剛体のような議論は、そもそも違っているのではないかということを指摘したいと思います。
(資料3 16ページ参照)
 では、構造の専門家にも耐えられるような資料として、今川先生が用意していただいた資料の説明に移ります。
(資料3 18ページ参照)
 部分的に代表的なフレームを取り出して検証してもらいました。右上の「現状モデル」が日建設計さんのもので、左下の「ケース1」が基礎の形状も加味したモデル、右下の「ケース2」が基礎部分を有限要素法で解いたものです。
(資料3 19~20ページ参照)
 どこの部分を取り出したかというと、代表的な真ん中あたりのゾーンです。
(資料3 21ページ参照)
 実際に、地震力は日建設計さんが用意した重量から拾い出して想定しました。どれも1階の床が動かない場合の地震力で、同じ地震力を使っています。
(資料3 22ページ参照)
 応力解析をしますと、日建モデルが左で、真ん中は線材として基礎の部材を充てた場合、右側は基礎は有限要素法で行いました。そうすると、下のほうも基本的に動くことになります。その要素だと、上の応力も少し増えてきたりします。これは中地震の場合です。
(資料3 23ページ参照)
 これは変位も大きくなっていることを確認しています。
(資料3 24ページ参照)
 これは二次設計です。保有耐力として、応力も上のほうが、フレームが振られることによって増えていることがわかります。
(資料3 25ページ参照)
 変形もそうです。特に、足元が腰砕け状態になりますから、1層、2層の変形量が増えていることが確認できます。
 このように、下のフレームも加味して解析しないとおかしいと思います。しかも、これはあくまでも、地震力は元の日建さんのままです。下の層も動くとなると、地震力の算定も、基本的に1層分増して考えなければいけませんから、この変形よりも大きい結果になるはずです。
 以上です。

○小島座長 ありがとうございました。
 それでは、株式会社日建設計から、今のご質問の回答も含めてご説明をお願いします。細部にわたっていますが、要領よくお願いします。

○富樫氏 本日は、このような場で建物の安全性について説明する機会をいただきまして、本当にありがとうございます。
 建物の構造設計というものは非常に専門的な分野でありまして、座長からもお話がありましたように、簡単に説明することが難しい分野ですが、誠意を持ってお答えいたしますのでよろしくお願いいたします。
 具体的な説明は常木からさせていただきます。

○常木氏 前のほうで指差しながら説明させていただきます。日建設計の常木です。
(資料4 1ページ参照)
 まず、今日は「豊洲市場の建物の構造安全性について」ということでお話をさせていただきます。
(資料4 2ページ参照)
 本日の説明は、最初に「構造設計の考え方」を少し話させていただきまして、その後、いただいている質問についてお答えしていきたいと思います。
(資料4 3ページ参照)
 まず「構造設計の考え方」です。
(資料4 4ページ参照)
 先ほど森高専門委員からお話がありましたように、この建物は公共性の高い建物ですので、建築基準法の1.25倍以上の耐震性能を確保するようにと東京都から求められています。したがって、地震時の人命の安全確保はもとより、地震後に構造体が大きな補修をすることなく使われる建物になっております。
 柱は、鉄骨の外側に鉄筋コンクリートを巻いた頑強な鉄骨鉄筋コンクリート造になっていまして、梁は軽量の鉄骨造とし、建物の中に固定的な壁がなく、粘り強い構造になっております。
 建物直下については、液状化の可能性がある部分は地盤改良を行い、極力、大地震時に液状化がないような形にしていますが、さらに、杭は鋼管杭を使い耐震性に配慮しております。
 この建物は5階建てですが、2階部分は軽量な床で、3階の床から吊っています。そのため、重さとしては全て3階にあるものとして構造的には考えていまして、構造的には4階建ての建物と考えて設計を行っています。
(資料4 5ページ参照)
 「質問ア:防水押さえコンクリートの厚さ」の問題です。
(資料4 6ページ参照)
 最初に結論から申し上げますと、防水押さえコンクリートの厚さが15cmでも、床をはじめとする構造体については安全です。
(資料4 7ページ参照)
 ご指摘いただいている部分は、水産仲卸売場棟の4階部分です。4階の平面図をご覧いただきますと、該当する部分はオレンジ色のところです。
(資料4 8ページ参照)
 このオレンジ色の部分は、実際にできている床は、構造体の15cmの鉄筋コンクリート造です。その上に、仕上げとして防水押さえコンクリート15cmが設けられています。これを、構造計算書を作成する段階で、防水押さえコンクリート1cmという形の転記ミスをしてしまいました。大変ご心配をおかけしまして、申し訳ございません。
しかし、床、梁という構造体は、防水押さえコンクリート15cmを見込んで設計していますので、構造的な安全性については問題ありません。
(資料4 9ページ参照)
 建物全体に与える影響ですが、防水押さえコンクリートが15cmになることによって、重さは4階で1,200トン増えます。これは、地上部分の総重量21万3,000トンに対しては0.6%の増加になります。建物の重さが増えると、地震時に建物に働く力も増えます。それに伴い、建物に必要な強度も増加し、それを計算すると1%以下になります。
(資料4 10ページ参照)
 この建物は、法的に必要な強度に対して、東京都から求められている建物強度は1.25倍です。それに対して、実際にこの建物が持っている強度は、法で求めているものに対して1.34倍の強度があります。これは、東京都が求めている強度に対して7%大きな値です。
 先ほど、必要な強度が、荷重が増加することで1%以下程度増えると話しましたが、それに対して、建物が持っている強さの余裕度は7%ありますので法的な安全性はもちろん、東京都から求められている耐震性能も十分確保できております。
(資料4 11ページ参照)
 次に、「質問イ:積載荷重の妥当性」の問題です。
(資料4 12ページ参照)」
 積載荷重については、大きく3点のご質問をいただいております。1点目は水産仲卸売場の積載荷重700kg/㎡が十分かということですが、積載荷重は、実際の使い方として想定される荷重に対しても十分なゆとりがあるので安全です。
 ターレやフォークリフトが走行しても大丈夫かというご指摘がありますが、車輪に集まる力や走行時の衝撃を考えても十分安全であることが確認できております。
 また、荷捌きや通路の地震用積載荷重は、品物や人を十分に考慮して設定しているので、地震時でも安全な積載荷重が設定されています。
(資料4 13ページ参照)
 具体的に説明させていただきます。
 積載荷重については、基本設計の際に、東京都から、参考としてこの表をいただいております。あくまでも参考としていただいている表ですので、日建設計で築地市場の使われ方を確認し、その妥当性を改めて検証した上で最終的に決めています。その値は、700kg/㎡を採用しました。
 今回、この数字が少なすぎるというご指摘をいただいていますが、実際に豊洲市場での使われ方を想定していますので、それで説明したいと思います。
(資料4 14ページ参照)
 これは、築地市場の同じ仲卸店舗の写真です。発泡スチロールの箱に商品が入れられて並べられていたり、水槽が置かれていたり、このような使われ方がされています。こうした使われ方を確認した上で、豊洲市場の仲卸店舗の荷重について想定を行いました。
(資料4 15ページ参照)
 これが、仲卸店舗がある豊洲市場の水産仲卸売場1階平面図です。赤の点線で囲まれた部分が仲卸店舗です。
(資料4 16ページ参照)
 その仲卸店舗の中のある部分について、実際にどのくらいの荷重がかかるかということを確認しているものです。
(資料4 17ページ参照)
 これは具体的な検討をしているものです。1㎡に700kgが載るということはどういうことかと申しますと、水深70cmの水が床一面に載っているような状況です。間口3mの店舗ですと、全部で8.5トンの重量が載ります。
 実際に店舗にいろいろなものを載せた状況を想定してみました。A店舗では、水深1mの水槽、B店舗では2.25トンの冷凍冷蔵庫、1㎡当たりに直すと700kgを超えるような重量物を想定した上で、そのほか陳列台、フリーザーなどの部分にも、通常想定するよりも多くの荷重を想定したものを置いてみました。
 先ほど高野さんから、イメージ図でいろいろお示ししていただきましたが、それをもう少し具体的な内容で確認しております。先ほど、ここに700kg/㎡を超えるものを載せたというお話をしましたが、その周囲に空間があったり、もっと軽いものがあったりする場合は、荷重が床に広がりますので、700kg/㎡を超えても、すぐに床が壊れるようなものではありません。床の積載荷重は、店舗全体に載っている重さを、その店舗全体の面積で割って平均的な値を計算し、それで判断します。
 例として挙げた店舗の中ではB店舗が最も重いのですが、このような重さを想定しても1㎡当たりは400kg程度でおさまります。ですから、設計で採用した700kg/㎡という値に対して、十分に余裕がある値になっていることがおかわりいただけるかと思います。そういう意味では、重量の大きい水槽や冷蔵庫、商品を置いていただいても十分安全です。
(資料4 18ページ参照)
 これはターレが走行する様子を示したものです。これほど多くのターレが走行していると渋滞を起こす状況ではないかと思いますが、このくらいのターレが荷を満載して密集して走行している状態を想定してみました。
(資料4 19ページ参照)
 ターレは、2トンの荷物を積載できます。ターレの重量がほぼ1トンです。運転手の重さを入れてもトータルで3.06トンという重さになります。それに衝撃係数をかけ、該当する面積で割ると、570kg/㎡となりまして、これも、想定している700kg/㎡という値以下になります。ですから、このくらいターレが密集して走行していても、床としては大丈夫です。
(資料4 20ページ参照)
 次に、荷捌きスペースについてです。
(資料4 21ページ参照)
 荷捌きスペースについても、築地市場の実際の使われ方を確認しております。これは築地市場の写真ですが、荷が高く積み上げられている状況がわかります。
(資料4 22ページ参照)
 これは、築地市場の使われ方を考慮した上で、豊洲市場でどのくらいのものが想定されるかということで、最大限を想定してみました。
 魚や氷が満載された箱が10段、高さ1.8mほど積み上げられているものが床に載っている状況を想定しました。ターレには荷物が積まれていて、外に運び出す状況を想定して荷重を算定すると、この状況でも540kg/㎡ということで、700kg/㎡と設定している床用の積載荷重に対して、まだ小さい値になっております。荷捌きスペースについても、最大限置いてもまだ安全であると考えています。
(資料4 23ページ参照)
 次に、水産仲卸売場にターレやフォークリフトが走行しても大丈夫かということですが、フォークリフトについては、積載荷重でチェックするのではなく、設計時点で、それぞれの床にフォークリフトの集中荷重が載ったとして大丈夫かということを検討しています。
 この図をご覧いただきますと、前輪の2輪にフォークリフトの荷重がかなり集中します。その集中している3.89トンという荷重に衝撃係数を掛けて、その荷重が床の中央にある状況で検討しています。荷重は床の中で広がりをもって伝わります。これは基準に書かれている値を採用していますが、そうした広がりを考慮して安全性を検討して確認しております。
 その結果、水産仲卸売場の1階において、車輪に集まる力や走行時の衝撃荷重を考慮しても安全であることを確認しております。
 ターレはフォークリフトよりも荷重が軽いので、これについては、フォークリフトの条件で確認してあれば問題ありません。
(資料4 24ページ参照)
 3点目の質問ですが、荷捌きや通路の地震用積載荷重は、品物や人を十分に考慮しているのかということだったかと思います。先ほどお示しした表ですが、地震用積載荷重というのは、床の強度を決めるための積載荷重とは異なっていまして、建物全体が地震に対して持つべき強度を決めるための積載荷重です。ですから、建物全体としてどのくらいあるかが重要になります。局所的な荷重の偏りなどについて考慮する必要はないと考えております。例えば、仲卸売場であれば、その売場全体に載っている荷重を仲卸売場全体の面積で割ることで算定できます。仲卸売場としては、250kg/㎡という数字を今回は設定しています。
(資料4 25ページ参照)
 この仲卸売場の地震時の積載荷重の設定については、仲卸売場に1日に入ってくる物量を東京都からいただきまして、それを用いて算定しています。具体的には、1日に仲卸売場に運ばれてきて滞留するものについては全て、売場を通過していくものについては半分の物量を想定しました。それに、パッケージや水、氷を追加すると、およそ倍の重さになります。これが1,900トンという数字です。1,900トンの物量を運ぶために、ターレであれば2トン積めますが、全てのターレが2トン積んでいるわけではないということで、最大2トンのものに対して半分の1トンを積むと想定すると、1,900台のターレが必要になり、ターレの重さが1台1トンですから、トータル3,800トンの重量になります。これは、実際にはターレ1,900台はないと思いますが、想定としては最大として想定しました。
 こうした重さが仲卸売場の通路部分――要は、売場の中にまだ荷物を入れていない状況で、通路だけにあると想定して、通路部分の面積で割っても、その平均的な積載荷重としては180kg/㎡になります。ですから、想定している250kg/㎡を下回っており、設計で採用した地震用積載荷重で大丈夫であると考えております。
(資料4 26ページ参照)
 「質問ウ:基礎ピット」です。
(資料4 27ページ参照)
 基礎ピットに関する質問は、大きく3点かと思います。基礎ピット側面は土に接していないのに、土の拘束効果を前提としていいのかというご指摘があったかと思います。私ども、基礎ピットの外周は大部分が土に接していますが、その拘束効果で地震力を低減するということはしていません。
 土の拘束効果がないのであれば、構造的には4階建てではなく5階建てとみなして設計すべきではないかというご指摘ですが、拘束効果を考慮しなくても、基礎ピット部分を十分頑丈に設計していますので、5階建てとみなす必要はありません。
 基礎の大きさ、剛性を考慮して杭の設計を行うべきではないかというご指摘もありますが、この部分については、基礎の大きさ、剛性に対しても、杭は地震時に安全であることを確認しています。
(資料4 28ページ参照)
 具体的に説明させていただきます。
 まず基礎ピットの外周部分ですが、先ほどもご説明がありましたので詳しくは申し上げませんが、外周部分では土に接しており、構造体とピット壁によって土が中に入ってくることを防いでいます。
 ピット壁は、基礎が外側に出ていまして、上部で構造体と押出発泡ポリスチレン板で接しております。基礎ピットの深さは1階床から5mで、土の中に埋まっている部分が4mです。これは全体の80%が土に埋まっていることになっていまして、法令上は地上ではなくて地下とみなせます。
 また、土による拘束効果を前提とはしていません。それによって地震荷重を低減することはしていません。
(資料4 29ページ参照)
 これは仲卸売場1階の部分ですが、この下には地下ピットがあります。
(資料4 30ページ参照)
 先ほど高野さんから、地下部分はこんなに危ないというお話がありましたが、あのとき示された模型のプロポーションは非常に細い柱でご説明されましたが、実際にあるものは、地上の柱は1m20cm角です。それに対して、例えば地下の大きな基礎は3.5m×9mくらいの大きなコンクリートの塊です。基礎梁も2m20cmのせいです。全くプロポーションが違うものになっています。このプロポーションが非常に大切で、地下部分の剛性がどれだけ高いかということにかかってきます。
(資料4 31ページ参照)
 建物の地上部分の地震力を考えた場合、地面より下の部分がどれだけ変形しにくいかが大切になってきます。一般に、地面の揺れに対して地上部分の建物は、地震の揺れに対して上階にいくほど揺れが大きくなっていきます。それによって上階ほど振られるわけですが、地下の部分といいますか、ピットの部分が非常に固いと、地面の揺れと1階の揺れは同じになりますので、振られることはなくて、地面の揺れ方と1階の揺れ方は同じです。要は、ピット部分で地震を考えても、1階で考えても同じになります。
 具体的に豊洲市場で計算した値では、地震時の1階部分の変形が1.6cmあるのに対して、基礎ピット部分の変形は0.5mm程度の変形しかありません。ほぼ一緒に動いています。ですから、地下ピット部分が地震で振られることで上の架構が振られる効果を考える必要はありません。
(資料4 32ページ参照)
 今は概念的なお話をさせていただきましたが、今回、一般的には行わないような詳細なモーダルアナリシスという手法で建物の揺れを考慮して地震力を求めてみました。これは、基準法でも、建物の振動性状を考慮して決めてもいいことになっていますので、それを実施しました。
 基礎ピット部分を、ご指摘のように1階として5階建てとみなして、地下ピットの基礎の底に地震力が入ってくると考えた場合と、4階建てとみなして、1階の床に直接地震の揺れが入ってくると考えた場合について、どのくらい地上部分の揺れが違うか、地震力が違うかということを検討しました。
 左のグラフはその結果で、プロットの点は各階に対応する地震力です。地震の力は、左側が小さく、右側が大きいのですが、まず、四角い水色のプロットが4階建てとみなした場合の地上部分の地震力で、赤い丸を線で結んでいるものは、基礎の下から地震で揺らされたと考えた場合の建物の地震の力です。地上部分について見ると、両者が同じであることがわかるかと思います。
 地下に埋まっているかどうかにはかかわらず、基礎部分を剛強につくれば、5階建てとみなした場合でも地上の地震力は変わりませんので、当初の設計どおり4階建ての設計をしておけば大丈夫です。
(資料4 33ページ参照)
 これは、モーダルアナリシスという解析をしたときに、建物の揺れを示したモード図です。こうした建物の揺れを重ね合わせて、前ページで示したような地震力を求めました。かなり専門的なことなので詳細は省略させていただきますが、検討した結果としては、このようになっております。
 先ほど、これ以外にも少しご質問をいただいていましたが、5階建てになった場合はこうなるのではないかというご質問でしたので、5階建てと考える必要はないということで、それらについては回答を割愛させていただきます。
(資料4 34ページ参照)
 最後に、基礎の大きさ、基礎梁の剛性を考慮して杭の設計を行うべきではないかというご指摘をいただいています。現在、この建物は、1本の杭に1つの基礎、2本の杭に1つの基礎、3本の杭に1つの基礎、あるいは、90度回転しているものなどいろいろあります。こういったもののこの部分の剛性を評価しろということだろうと思います。それについては、一般的には検討しないのですが、今回、再度確認してきました。
 杭の設計をする際に、基礎梁の剛性を考慮することは、むしろ危険側ですので、今回の検討においても、基礎の頭の部分が回転しないという条件で検討しています。そうすると、1本あたりの杭が受け持つ力は、左端の図を1とした場合、ほかは、違っていても1%くらいですので、基礎の剛性を評価することの影響は非常に小さくて、その影響を考慮する必要はないと考えております。
 先ほど高野さんよりご紹介いただいた結果と違うかと思いますが、この辺は仮定をお聞きしないとよくわかりません。
 今、説明した中に、先ほどの質問から抜けているものが一つあります。まとめに進む前に、それだけ口頭でお話しさせていただきます。
 3つの論点とは全く違う論点だと思いますが、地震時の上下動についてどうしているかというご質問がありました。地震時の建物の床の上下動については、法で、例えば柱からはね出しているキャンチレバーと言われるものについては、自分の重さ以外に、1Gと言いまして、自分と同じ重さをさらに付け加えて設計しなさいという規定があるので、当然、そのように対応しています。それ以外の部分については、法では何の規定もありませんので、いくらならいいのかということについては明示されていませんので、設計者としてどう考えるのかという問題になるかと思います。
 今回の豊洲市場については、法律で決まっていませんので明確に幾つということを決めていませんが、設計者としては、自分の重さ以外にさらに自分の重さがかかっても、要は、2倍の自分の重さがかかっても、法律にはないので、きちんと線を引いて、これでNG、OKということではないですが、おおよそそのくらいの力がかかっても安全であるような設計をしております。
(資料4 35ページ参照)
 最後にまとめです。今お話しさせていただいた防水押さえコンクリートの厚さは15cmでも建物は安全です。
 積載荷重700kg/㎡というのは、実際の使い方で想定される荷重に対してゆとりがあります。
 基礎ピットの外周は大部分が土に接していますが、土の拘束効果を前提としていません。拘束効果を考慮しなくても、基礎ピットは十分頑丈に設計しているため、5階建てとみなす必要はありません。
 ご質問に対しては、以上がお答えです。
(資料4 36ページ参照)
 今、説明させていただきましたが、豊洲市場の建物は、法令を遵守するとともに、東京都が求める安全性を満たしていますので、安心してお使いいただける建物だと思っております。
 以上で説明を終わります。

○小島座長 ありがとうございました。
 残りが45分です。審議を要領よく進める上で、進行役を竹内専門委員にお願いしたいと思います。専門家の議論ですので、了解できるところ、了解できないところがあるかと思いますが、できるだけ了解できるところは了解し、あるいは、了解できない部分はなぜこういうところなのかということを整理した上で議論を進めていけたら幸いです。
 それでは、竹内専門委員、お願いします。

○竹内専門委員 まず、プロジェクトメンバーに意見を求めたいと思います。
 どなたかご意見がおあり方、いらっしゃいますか。まず、ご自身の専門も説明いただいた上でお話しいただければ幸いです。

○時松専門委員 東京工業大学の時松です。専門は建築基礎構造、地盤・地震工学です。
 まず意見です。高野さんからお示しいただいたスライドのうち最後から2番目、「現状」、「ケース1」、「ケース2」の比較に関してです。設定したモデルは、個人的には妥当かどうか疑問がありますが、その議論はさておいて、この結果を拝見すると、建物の安全性に最も影響があるのは各階の右端に書いてある層間変形角です。いずれも、条件を悪くしたとしても、当初に設定されている変形角の中におさまっているのではないかと思いますが、間違いないでしょうか。条件を変えて、層間変形角に与える影響は極めて少ないのではないかと判断しました。

○高野氏 基本的に、各層の地震力、上からの層せん断力は、日建設計が設定した層せん断力で対応しているから、基本的にそう大きな差は出ません。問題は、下の層を加算することによって地震力の算定そのものが大きくなっているかどうかが分かれ目になると思います。

○竹内専門委員 議論されますか。

○時松専門委員 それに関しては、日建設計から先ほどご説明があって、それほど違わないのではないかと私は理解しました。

○竹内専門委員 まずプロジェクトメンバーから意見を言わせていただいて、その後で一つずつ、押さえコンクリートの厚さの問題、積載荷重の問題、地下と見るか見ないか、この3点について順番に進めたいと思います。
 ですので、まず総括的な話としてプロジェクトメンバーからご発言があればしていただきたいと思いますし、そうでなければ、一つずつの議論に進みたいと思います。
 森高専門委員、いかがですか。

○森高専門委員 論点が3点ありまして、防水コンクリートの厚みは建物の構造安全性に大きな影響がないということは、たぶん高野さんも同じご認識だと思いますし、私もそう思います。
 積載荷重の設定については、日建設計さんが築地の現状を見られて、恐らく、高野さんは卸売市場の、水槽や活魚が置かれている水槽に比べて小さいのではないかという話で、1㎡当たり700kg自体が小さいという話ではないと私は理解しましたが、それでいいですね。
 私自身は、写真を使いながら実際の使われ方を想定して、床に物が置かれた場合の総重量から面積で割った重量が700kg/㎡に対して余裕があると理解しました。これも、大きな争点にはならないと感じていますが、そのあたりはいかがでしょうか。

○高野氏 私は、基本的に、実際にどう使われるかというデータはありませんので、実際に、設計者と要望を出される側との間で、本当にそういう内容でいいという確認が取れれば、基本的にはそれでいい話だと思います。ただ、50年、100年使うという触れ込みの建物ですから、将来の拡張性などは多少の考慮があってしかるべきではないかと思います。

○森高専門委員 将来の拡張性についてはここでは議論しなくて、これから豊洲が使われる際の現状に即した積載荷重の設定かどうかということですので、そのあたりをお聞きしたかっただけです。
 今、少し見解の相違があるのは基礎ピットのモデル化だと思います。時松専門委員からもご指摘がありましたように、あのピットを構造的にどのようにモデル化するかというお話で、先ほど試算されたモデルが、前提条件を聞けていなかったのですが、この委員会の場は、一般の方だけではなくて構造の専門家の方もたくさんご覧になっていると思いますので、そういう専門家の方からも反響があるかもしれません。私としては、高野さんの説明も一理あるかもしれませんが、あの模型はスケールが全く違っていたので、あれは誤解を招くのではないかという気がしました。

○高野氏 あれは、実は概念の話です。

○森高専門委員 概念ですが、一般の方は、あの概念をそのまま受けとめられる可能性がありますので、少しまずいかな、という気がしました。専門家は理解できますが、一般の方は、ああいう全然スケールが違うような揺れ方をすると、誤解されるかもしれません。

○竹内専門委員 そのまま進む前に、一回ざっと流したいと思います。

○菊森専門委員 私は建築工学の専門ではありません。むしろ、経済や経営、ファイナンスなどの分野に携わっていますので、皆様方からすると非常に素人っぽい質問をさせていただくかもわかりませんが、今のご説明をお聞きして、2点について考えしました。
 1点目は、全ての重量を土地が支える、その土地が軟弱であることはどういうことを意味するのかということで、4月に熊本地震が起きて、私は長崎市内に住んでいますので、埋立地でも、江戸時代に埋め立てられた土地と、20年前に埋められた土地との地震の感じ方が全く違うことを身をもって体験しています。太い柱で、しかも、昔、東京駅の地下に、2万本の松の杭であの重量を支えたということを鹿島建設から聞いていますが、構造的には何の問題もないかもわかりませんが、一般の人は、関東大震災級あるいは直下型地震が来たときにどこまで大丈夫なのかということについての安心を得たいのだと思います。安全の問題ではなくて安心かもわかりません。その点を、私のような、専門家ではない人間もわかりやすく伝えていただく必要があるのではないかと思います。
 2点目は、今のお話を伺っていて、いかに一定のルールのもとに安全な建物を建てようと努力されてきたかということを、私は痛切に感じました。その点では問題ないのかもわかりません。問題は、それ以外の部分で、所与の条件というところで、本当に700kgがどこまで妥当性があるかについて、搬入する重機、水の重さ、水深70をぴったり敷きつめることはないかもわかりませんが、どういう仮定のもとでその条件を出したかということも大事な問題かと思います。いかに建物が安全かということはよくわかりましたが、その周辺の自然環境の問題、市場を使う人がどこまでのものを持ち込む可能性があるかということを、仮定をきちんと決めておくこともあわせて大事かなと感じました。
 以上です。

○竹内専門委員 ありがとうございます。
 それては、森山さん、お願いします。

○森山専門委員 まず、日建設計さんの提出資料の資料4の10ページにある、耐震強度(保有水平耐力)が余裕度として1.34倍という記述と、同時に、参考資料としていただいている資料4の3ページのグラフが関係していると思います。何倍ということをどこで判断するかというと、地震が起きた際に建物がどれくらい変形してもいいかということだと思います。このときに保有水平耐力は、変形が100分の1で設定したときに1.34倍あるという前提だと思います。この変形量が、果たして100分の1でいいのかという疑問があります。100分の1というのは、1mの間口があったら1cmくらい動くという意味だと思いますが、なぜ100分の1なのかという点が気になりました。
 2点目は、フォークリフトの重量の問題を確認されていると思いますが、1.5トンのフォークリフトという想定ですが、実際にはもう少し大きめのものが動いているのではないかとおも思っています。ですから、フォークリフトを使う、使わないという議論を東京都の市場の方とどのようになっていたのかなということも知りたい点です。
 あと、全体として、こういう変更なり何なりがあった場合の手続きは、現状はどうなっているのかなという点が、もう一つの質疑としてはあります。
 以上です。

○竹内専門委員 ありがとうございます。
 それでは、佐藤委員、お願いします。

○佐藤専門委員 佐藤です。意匠設計に携わっている者です。
 先ほどのおふた方のお話を伺って、それぞれの主張はよくわかりました。1番と2番の問題については、ほぼ合意を得ているような気がします。
 3番目の問題ですが、先ほど高野さんが、問題をわかりやすくするためにモデルを揺らしてご説明されました。そこの写真を出していただけますか。
(資料3 12ページ参照)この絵の中で、地下の土がなくなったらここが揺れると揺らしましたね。実際、日建設計さんの計算でも、この部分は、4mの中でわずか0.5mmしか動かないと。また、今川さんの説明書類の中でも1.3mmしか動かない。この模型の中で、実際にそのものを説明するとしたら、むしろ左下の写真です。動くということを説明するのは右下の写真かもしれないけれども、現実は左下の写真の動きです。それを、あなたがパフォーマンスとして皆さんの前で実演してみせたことは、私は非常に残念です。事実と違う表現を用いて、都民の方に誤解を与える解説をした、それは専門家として行うべきことなのかと非常に疑問を感じました。

○竹内専門委員 佐藤専門委員、そこまで行くとお互いの攻撃になってしまうので、それはやめていただいて。

○佐藤専門委員 わかりました。

○竹内専門委員 一つずつの問題から、納得している点と納得していない点があるのであれば、それは、ここでは、こういうものとこういうものがずれているという確認で、後は専門家に委ねなければいけないかもしれないし、また、もっと解説していかなければいけないかもしれないし、また、ご説明をいただかなければいけないかもしれないですが、順番に一つずつの問題がどうなのかという形で進めていきたいと思います。
 まず、防水押さえコンクリートの厚さの問題に関して、日建設計からも説明がありましたし、高野さんからも疑義に対して説明がありました。それに対していろいろ見ている中で、特に問題がないような印象を受けました。そこは大丈夫ですか。この問題は、手続きの話は置いておいて、コンクリートの厚さが扱ったものが薄いように記載されていたけれども、全体としての重さの問題で、地震時でも大きな影響がないと考えてよろしいですね。

○高野氏 全体に比べると本当に限られた比率ですので、私も、基本的に大きな影響はないと考えております。

○竹内専門委員 ということで、1点目は問題ないのではないかという説明をしていただいたということで先に進めたいと思います。
 先ほど井上専門委員にお伺いしなかったのですが、何かありますか。

○井上専門委員 井上と申します。私は土壌汚染が専門で、建築に関しては素人ですが、お話を伺って、1番目の点、2番目の点は、日建設計の説明で十分理解できたと思います。
 細かい点ですが、1番目の押さえコンクリートで、説明では、詳細な計算をしなくても十分安全であるというざっくりとしたご説明だったような気がします。実際に、再計算のようなことはされていたのかどうか、その点だけ確認させていただいて、それが全体に影響を与えないということは十分にわかりますが、そこだけ質問させていただきたいと思います。
 あと、これからの論点になると思いますが、3番目の問題が素人なりに気になることと、私自身、5年前に東日本大震災を直下で体験した者として、あのようなメガクラスの地震に対しても、そこを考慮した設計ではありますが、それで本当に十分なのかどかという点を議論の中で押さえていっていただきたいと思います。今日の話に直接は触れないことかもしれませんが、その点があります。
 また、実際に、基礎ピット、地下ピットに関して、幾つかのモデルがあることは、高野さんからご提起があったと思いますので、それに関して、そう考えた場合にどうなのかということは、もう少し議論したほうがいいのではないかと素人なりに思いました。
 以上です。

○竹内専門委員 ありがとうございます。

○小島座長 私からも二、三あります。1点目は、10mm・150mmの問題は、最初に申請を提出した段階で、東京都の建築指導課、それと外部に構造計算の審査を委託するルールになっていますので、そこで審査していただいた。ある意味では、その審査で見逃した部分ですね。申請をいただいた段階で、構造計算書と設計図が違っていたにもかかわらず、それを東京都の審査では発見できなかったという問題があり、そして、現段階でそれを発見していただいて、これはやはり直さなければいけないということで今、議論しているわけです。それを直す場合、いわゆる簡易な計算といいますか、エクセルなどいろいろなもので簡易な計算をして修正する手間と、あるいは、もう一度モデルを回して計算する手間とでは、どういう違いがあるのか知りたいということがあります。
 2点目は、菊森専門委員と同じで、次回のテーマにもしたいと考えていますが、設計事務所が設計を行うに当たっては、発注主である東京都が提出した条件設定があるわけですね。市場としてはこういう機能で設計してくださいと。それが一部、少しずつお話をいただいた前提で設計されているわけですね。例えば700kg/㎡で設計してくださいというような。なぜ700kg/㎡かというのは、東京都から言われたからですか。要するに、最初の条件設定は、発注主と設計会社の両方が話し合って決めていくプロセスで条件を決めていくのでしょうか。そのプロセスを聞きたいと思いました。

○竹内専門委員 私からも発言させていただきます。
 いろいろな質問に対して真摯に答えていただいた日建設計の皆さんには大変感謝したいと思います。
 あと、私も小島座長と同じで、条件をどう設定したのかということ、情報の共有がどうなっていたのかということには大変興味があります。
 では、一つずつ進めていくというところに戻りたいと思いますが、1番目の問題に関しては、安全・安心上、特に問題はないと。ただ、コンピュータで再計算することに関してどう違うのかということと、発見できなかったことに対してどう考えられるのかということも含めて、お答え願います。

○常木氏 まず、全体の再計算をすることと、簡易なものでというお話でしたが、私どもが考えているのは、図面はそのとおりできていて、一部計算が違っていた部分があったわけですが、その程度もそれほど大きくはないので、簡易な計算で十分確認できるレベルだと考えていまして、12条5項の手続きができないかということで、現在、建築主さんとお話をさせていただいております。まだ決定していませんが、そのように考えているところです。そういう中では、全体モデルを計算し直さなくても安全は確認できるようなレベルだろうと考えています。全部を計算し直すことも当然可能ですが、全体を計算し直して、このように大量のものを再度審査していただくのはなかなか大変だということもありますので、違った部分だけを、この部分ですよという形で対応させていただくのがよろしいのではないかと、今は考えております。

○竹内専門委員 少し解説します。
 12条5項の軽微な変更となると、計算し直さなくても、そこだけを見て、オーケーならいいよという手続きですね。

○常木氏 そこだけ簡易に手計算で確認できる範囲ということです。

○竹内専門委員 それを、都庁に今、それでいいですかという質問をしている状況と伺ってよろしいですか。

○常木氏 まだ決定ではなくて、協議している段階です。

○竹内専門委員 もう一度回し直すと大変な手間なのかどうかという点に関してはいかがですか。

○常木氏 すごく手間がかかるというわけではありませんが、要は、審査される方も全部を見直さなければいけなくなりますので、その部分だけを見ていただく形で――モデルが違ってくるとか、構造の大きな考え方が違ってくる場合は別ですが、そうでなければ、むしろ、違っている箇所を確認したほうが、審査をされる方もよろしいかなということです。計算し直すこと自体は可能です。

○竹内専門委員 わかりました。ありがとうございます。
 では、1点目の問題はよろしいでしょうか。
 先に進めます。
 次は、積載荷重700kg/㎡という問題に関して、委員からも感想がありましたし、条件設定の話も出てまいりましたので、日建設計から、どういう状況で700kg/㎡になっているのか、都から何を言われていて、どういう状況なのかということを、もう少し具体的な数字なりを教えていただけますか。

○常木氏 資料4の13ページの表をご覧ください。これは、東京都から、あくまでも参考にしてくださいということでいただいております。参考としていただいた表は、当然それなりに受けとめていますが、先ほど申し上げましたように、私どもなりに築地の実際の使われ方も確認し、そこにどのくらいの荷重が載っているかということも想定し、この表と実際に使われているものとどちらが大きな荷重になっているかということを見てみました。その上で、東京都と相談して、実際のほうを使おうということで最終的に決めさせていただきました。
 ですから、私どもが実際の使われ方を見て出したものと、東京都から出したこの表と、どちらかというと、大きな数値のほうを採るようにしています。先ほど、私どもから、実際の使われ方についてお示ししましたが、700kg/㎡というのはそれよりもかなり大きな値になっております。それで東京都と協議し、これでよろしいですねということでのコミュニケーションはしています。

○小島座長 そのコミュニケーションを通じて、1.25倍よりも大きく1.34倍につくったということですか。今、実際にそうだとおっしゃったので、どのようなプロセスで――1.25倍となっているけれども、実は1.34倍にしたというのはどういう経過なのでしょうか。

○常木氏 積載荷重ではなくて耐震強度ですね。1.34倍というのは、1.34にしましょうということではなくて、大きな構造計画の中で、何年か前に姉歯の問題もあった中で、ぎりぎりで決めるのは、何か少しでも変わったことが起きた場合には問題があるだろうということで、ある程度の余裕は見ておくべきであるという、構造設計者の中には共通の認識があるだろうと思っています。それが1割なのか、2割なのか、5%なのかということは、かなりコンセンスの得にくい部分ですが、1.34倍くらいの余裕度については東京都にお示ししていますし、このくらいの余裕度を見ておくことについては共通の認識としてあると私は考えております。これを狙ったわけではありません。

○森山専門委員 1.34倍になっているという大前提が、層間変形角、変形量をどのくらいまで許容するかということと関係していると思います。今回、変形が100分の1まで大丈夫と見た場合に1.34倍という、関係が連続した数字です。となると、100分の1と決定した理由、そのあたりの関係は、東京都から示された数字なのでしょうか。

○常木氏 先ほど、SRC造、鉄骨造というお話をしましたが、東京都財務局の指針の中に、鉄骨造の場合は100分の1まで保有水平耐力の変形を使っていいということがあります。この建物の変形は梁の固さで支配されていまして、その梁が鉄骨でできているので、その制限に従うとよろしかろうということで、これは東京都とも相談させていただき、最終的にこの数値でいいだろうということで決めさせていただいております。

○森山専門委員 東京都から100分の1でという注文があったということでした。私は、SRCが垂直材なので、どちらかというとRC系なのかな、この層間変形角はもう少し厳しく見るべきではないかと思ってはいましたが、それは、逆に、100分の1だというご指示があったわけですね。

○常木氏 100分の1ということで、私どももそうですし、東京都にもご了解頂いています。

○森山専門委員 わかりました。

○竹内専門委員 では、積載荷重の話に戻ってよろしいですか。
 積載荷重の問題に関して、ターレは想定していて、フォークリフトは載っても大丈夫だけど想定されているのでしょうか。その辺が、業者に応じて、例えば先ほど、70cmの水深の水槽までは大丈夫だけど、1mだとどうなのかという話が、利用者からの話として聞かれていて、私の実感としては、現在、仲卸棟ではフォークリフトを使っていて、大きめのものもあるから2.5トンなのかな。1.5トンなのかわからないのですが、そういうものを使っていると思っています。
 また、水槽の厚さも、使うときには果たして70cmで大丈夫、それ以上載っても大丈夫なのかということで、先ほど大丈夫だというお話をいただいたのでだいぶ安心したのですが、その辺の設定条件のようなものが、今、余裕を見ているからフォークリフトの小さなものは大丈夫というお話だったのか、その辺が少し曖昧だと思ったので、実際、日建設計から、今はどうなっているのかお伺いしたいと思います。

○五十君氏 では、私から説明します。
 先ほど構造の話でもありましたように、フォークリフトは、当然、水産仲卸棟については走行できるように考えております。
 それをどのように決めていったかということですが、最初に申し上げておきたいことは、豊洲市場は東京都が大家さんで、卸会社や仲卸などのお使いになる方がテナントさんで、いわば巨大なテナントビルと考えております。したがって、テナントのご意見をまず聞いて、東京都がそれをまとめて、それをもとに設計者は設計していくという流れだと思っています。
 我々は、東京都から建物本体の設計を委託されて設計監理をしてきたわけですが、東京都が主宰される市場関係者との打ち合わせの場に我々も出向き、ヒアリングをして、打ち合わせをして、決めてまいりました。そういう流れの中でいろいろなものが決まっていったわけです。
 では、実際にどのようなフォークリフトをお使いになるのかということは、これから、東京都が造作相談室という、一般のテナントビルと言うと内装監理室と呼ばれていますが、どういう使い勝手、どういうところまでであれば大丈夫、どのくらいの電気容量であれば大丈夫か、そういう基準を確認し合う場がありまして、そこで、使われ方も含めて決めていかれる内容だと思いますので、そこは設計者が踏み入れるところではないと考えております。

○竹内専門委員 積載荷重700kg/㎡の中に、フォークリフト自体の重さだけで1.5トンとか2.5トンあるので、一般的な積載荷重の考え方からするとフォークリフトは使えないのではないかと思うのですが、それは使えるということでよろしいですね。

○五十君氏 それは大丈夫です。

○森山専門委員 今の五十君さんのお話の中で、テナントの意見を集約する内装管理室という部署があって、そこは五十君さんたちではなくて、内装監理室で話し合われていたということでしょうか。

○五十君氏 いえ、これから使う前提の時に内装監理室が機能していきます。設計段階では、内装監理室や造作相談室はありませんので、市場の利用者から意見を吸い上げて、それを東京都でまとめていただくという形です。それを実際に使う段階になると、あなたのお店はどういうものを持ち込まれますかと、そういう相談に対してお答えするのが造作相談室という組織です。

○竹内専門委員 ありがとうございました。
 先ほど菊森専門委員から出た、地盤が軟弱なところでの心配ごとに対して、まず日建設計の考え方をお示しいただけますか。

○常木氏 構造設計の中では、当然、この地盤の強度も考慮して、杭の設計をする際には、液状化するのであれば液状化を考慮しますし、やわらかい土であればやわらかい土であることを考慮して設計をしています。液状化の可能性があるところ全てを地盤改良ができているわけではありませんが、極力、まず液状化しないようにということと、万が一起きても大丈夫なようにということで、地震の応力に強い鉄骨の鋼管を用いた杭を使って設計しております。

○竹内専門委員 ありがとうございます。
 土壌に関しては時松専門委員が専門家でいらっしゃるので、液状化の話など、そうしたことでの一般的な話として皆さんご心配されているので、安心という点での液状化の話を少しまとめてしていただくことは可能ですか。

○時松専門委員 今、日建設計からご説明があったように、ここの敷地は、相当部分、液状化対策を実施しているので、第1段階の一次設計レベルの液状化の可能性は低くなっているのではないかと思います。
 ただ、建物の周辺部分に4mの盛り土をしていて、この辺の締め固めがどのくらい行われているのかは確認していないのですが、過去の例だと、こういう建物周辺の埋め土は巨大地震が起きると大きく沈下して、建物自体は健全であっても、事業の継続・維持が図れないというケースがありますので、その辺は再確認いただけるとありがたいかと思います。
 ついでにもう一つだけ。軟弱地盤ということで、先ほどから、埋め土したことで基礎が変形して、応答が違うじゃないかというご意見が出ていますが、日建設計の資料4の32ページで、4階建てとみなした場合と5階建てとみなした場合で、上部構造の応答はほとんど違いがないのですが、赤で示している部分の最下階、基礎になる部分で求められている地震力は非常に大きい。しかも、周辺の埋め込みの効果を見ないということだったので、剛性が高いから基礎の変形はないというお話をされていました。しかし、実はフーチングの下の杭は大きく変形するので、その辺の耐震設計についてしっかり対応されていると思いますが、一言コメントをいただければありがたいと思います。

○常木氏 基礎部分の地震力の値が大きくなっているのは、あれだけ巨大な基礎をつくっているものですから、建物の上部と基礎が同じくらい重いものです。ですから、絶対値としては大きなものになってきます。当然、杭は、そうした荷重も考慮して、なおかつ、フーチングの部分は土がありませんから、土の抵抗も考えずに、その下の土がある部分からだけの土の抵抗で杭は設計しています。

○竹内専門委員 だいぶ専門的になってまいりましたが、まず、先ほど、1番の荷重問題の次に積載荷重の話をしながら土壌の話に行ってしまいましたが、積載荷重に関しても、700kg/㎡でフォークリフトまで使える状態ということで日建設計が設定されて、現在はこうですよという説明に関して、そのやりとりも含めて、一通り皆さんがご納得されたかどうかに関して、何かご意見がある方はいらっしゃいますか。

○小島座長 設計会社の日建設計と、内装監理室を担当している大建設計とは、通常は意見交換されないのでしょうか。あるいは、普通の建物で、業者から見ると、両方とも同じように見えてしまうので、誰に言えばいいのだろうということがあります。これが建設業界の常識というか、よく役所のたらい回しと言われますが、話をどちらに持っていったらいいのか明確になっているのかどうか。そこを教えてください。

○五十君氏 通常ですと、内装監理の技術的なサポートを行うのは、それを設計した設計事務所、今回であれば我々日建設計が担うのが普通のあり方だと思っています。ただ、今回の豊洲市場では、東京都という大家さんで、東京都自身でも設計条件を決めたり、市場関係者と打ち合わせをされていますので、東京都から別の設計事務所に、内装監理というか、造作相談室の技術的支援を頼まれたということで、造作相談室に関しては我々は契約していませんので、そこには立ち入っていません。しかし、設計者として大建設計とのコミュニケーションはとっていまして、我々が設計したものは、法的にはこういうものである、防災上はこう考えているなど、一通りの情報は伝達した上で造作相談室の業務を行っていただいていると思います。
 本来であれば、橋渡しというか、内装管理室というか造作相談室、同じものですが、母体は本来的には東京都が運営されている組織です。技術的なサポートを、設計者あるいは新たな技術コンサルが支援されているという状況です。

○富樫氏 東京都が我々に対して建物本体の設計を発注され、内装は大建設計に発注されるという場合は、やはり東京都からそれぞれの設計事務所に指示なり打ち合わせをさせていただいて、我々が内装について知る必要がある情報は、東京都を介して大建設計からいただくという形が情報の基本的な流れになっています。
 しかし、部分限定的な情報については、例えば、日建設計と大建設定で直接やりとりしてもいい――ある意味、そのほうが効率が良いですから、そういう場合にはそういうやりとりをさせていただくこともありますし、今回もそういうことがありました。ただ、こういうやりとりをしました、その中でこう理解しましたということを、発注者である東京都にきちんと報告しておかないと、問題が起きることが往々にしてあります。ですので、私どもからすると、もちろんプロジェクトの円滑な運営のためには、そういう横のやりとりはやぶさかではないですが、逆に、様々なトラブルを起こさないという意味では、間に東京都に入っていただいたほうがありがたいとも言えます。そういう方法を今回はさせていただきました。

○竹内専門委員 ありがとうございました。1点目の問題と2点目の問題、あと土壌の話をしたところで、3点目の、何階建てになるのか、地下を地下とみなすかどうかという点について、ご発言をお願いします。

○高野氏 確認したいことがあります。
 モーダルアナリシスなどいろいろ行われて、その説明の中で、周囲の土には拘束を期待しないとおっしゃいましたね。

○常木氏 土があることを前提にあの値を出しているわけではありません。

○高野氏 もともと日建設計の構造計算書に出てくるモデルは、ここが支点と考えていたというのは、それはそれでよろしいですね。
 資料3の18ページ、「3種類の架構条件」のモデル図をご覧ください。緑と黒い丸印のところを支点と考えていらしたのは間違いないですね。

○常木氏 はい、それは結構です。

○高野氏 最終的には、フーチングが下に延びていて、現状、解析し直したモデルは、フーチングの下、杭のあるところ、杭の頭が支点ということも間違いないですね。

○常木氏 モーダルのモデルということでしょうか。

○高野氏 いえ、最終的に全ての検討において。

○常木氏 いえ、それは違います。

○高野氏 ということは、私たちは、支点はこことここなので、約4.4m。要するに、層が一つ増えることになるわけです。この違いはわかってくださいますね。地震力というものは基本的に慣性力ですから、それぞれのパーツの質量に対して横に加速度が発生して、それに伴った力ということは間違いありませんね。
 ということは、各階、床場のあたりに荷物もあるので、一般的に床のレベルに質量が集中する、この絵で言うと梁の部分に質量が集中するという理解はいいですね。そうすると、この現状モデルの支点はここで、ここは動かない層ですね。しかし、ケース1では層が発生して、当然高さもあるので、横に振られたら慣性力が発生するし、高さがあれば、その分のモーメントも発生しますね。ということは、明らかに応力状態が変わりますね。外力の分布状態が変わりますね。それは間違いないですね。それで最終的に応答性状が同じというのは、何かからくりがあるのかなと。
 あと、当初、こちらで設計した際には、これはあくまでも地中のものなので、杭の検討の際には、地下震度の0.1でやられたわけですが、ケース1の場合は、果たして、地下の杭などを検討する地震力の震度は、最終的に一体どの程度になっているのでしょうか。

○竹内専門委員 相当専門的な、構造設計者同士のバトルの感じなので、まずは、森高専門委員に、何が違うのか解説していただいてもよろしいですか。

○森高専門委員 いいですよ。例えば、一番わかりやすいのは、資料4の31ページをご覧いただきますと、今、モデルの考え方が食い違っているのは、基本的にフーチングが地盤から少し突出しています。日建設計の考え方は、突出はしているけれども、フーチングの断面自体が上の柱に比べると圧倒的に大きく、実際に計算すると変形が非常に小さい。だから、ここは基礎として考えていいということです。
 高野さんのご意見は、そうではなくて、巨大な柱に梁がつながっているので、モデルとしては、そこもきちんとモデル化しないとだめじゃないですかというご意見ですね。

○高野氏 それも含めてですが。
 剛性が高いというのは、太いですから、わかります。しかし、あくまでも支点はここですね。微小な変形とはいえ動いているわけです。変位があるというのはそういうことですね。せん断力とモーメントが発生する。

○森高専門委員 難しい話はいいです。要は、ここのモデル化が、高野さんと日建設計で少し食い違いがあるということで、これをここで議論しても時間が足りませんので、専門家同士で再度議論して、きちんと結論を出しましょうという話にしたいと思います。

○竹内専門委員 それで大丈夫ですか。今、違いの点はわかったとして、それをどう進めていくのかということのご提案をいただきながら、こちらでも引き取りながら、専門家として、どのようにわかりやすく説明するかということも考えながらでないと、何をされているのかわからない感じになるので、その辺のご説明の仕方、何か取り組まれること、取り組んでほしいことがあれば、その概念的な話をしていただけると助かります。いかがでしょうか。

○常木氏 高野さんがおっしゃっている、振れるじゃないかということに対しては、建築基準法の中でも、建物の振動性状をきちんと考えて決めていいと。高野さんがおっしゃっているのは、Ai分布という、いわゆる略算法ですので、それで計算するとこうなるということをおっしゃっているわけですが、法律の中でも、そういう振動性状をきちんと考慮して決めていいよと書いてあります。それに従って私どもは、モーダルアナリシスというのは、そういう振動性状を考慮して地震荷重を決めました。逆に言うと、略算ではなくて精密に計算して設定していますという説明をさせていただいたということです。

○高野氏 いろいろな手法があることは私も知っています。ただし、申請時は、Ai分布での検討という方法を選んだのですから、それを途中でルールを変えるというのは話が違うのではないですか。

○森高専門委員 ここで議論しているのは、申請時の手続きなど、そういう考え方もさることながら、今、一般にご覧になっている方は、この建物がきちんと耐震安全性が確保されているかどうかということです。それについては、ここできちんと結論を出したいと思っています。

○常木氏 今、申請時と違うというお話をされましたが、私どもは、申請時と変えているつもりはなくて、申請時の方法でいいことを説明するためにモーダルということを説明しているだけで、モーダルで行いますということではなくて、もともとあそこの部分は固いものなので、確認申請の中でも基礎として認めていただいて設計しています。ですから、変えたわけではないので、今のご発言は少し違うと思いました。

○森高専門委員 わかりました。エンドレスになってしまいますので。

○竹内専門委員 座長にマイクをお返しします。

○小島座長 今の議論は専門家同士で話し合っていただきたいと思います。問題は、今のお話の中で、法律の仕組みとして、例えば計算方法としてA法があり、B法もあり、C法もあると。東京都、発注主や業者からすると、結果はどうなのかということです。変わりがあるのかどうか。要するに、計算方法としてA法を選択しようが、B法を選択しようが、C法を選択しようが、地震が起きたら倒れたり壊れたりして使いものにならなくなるのは困るけど、そうでなければ、A法でも、B法でも、C法でも、どれでもいいわけです。
 要は、皆さんにご議論いただくことが、実際どういう影響があるのかということも明らかにしながらおっしゃっていただかないと、専門家の興味本位の議論になってしまいます。これは、実際に使用する業者が安心できるかどうかという観点が重要なので、それによってどのような不都合が起きるのか、あるいは、不都合は起きないのか、そういうことを明確にしていただきたいと思います。ですから、A法であろうが、B法であろうが、使う側からすれば、それはどちらでもいいから安全・安心な建物にしてくれということ以外に何もないわけです。ですから、そういう観点でご議論を整理していただきたいと思います。

○森高専門委員 そのとおりだと思います。
 日建設計の最後のスライド(資料4の36ページ参照)で出されていましたが、本質的にこの建物は法令を遵守して、東京都が求めている耐震安全性を確保していると宣言されているので、これは設計者の責任としてきちんと表明されたわけですが、それで間違いないですね。

○常木氏 はい。

○竹内専門委員 それでは、この問題に関しては、専門家同士での議論がまだ必要であるということで、この場での議論を引き継いで、安全・安心であることを確認することをPTとして進めていくということでよろしいでしょうか。

○富樫氏 私どもは、法に則って設計を行い、法に則って安全性について本日ここで説明したつもりです。ですから、そのことだけはこの場で確認していただきたいと思っております。
 例えば、今、高野さんからいろいろなご指摘をいただいていますが、もし、私どもの最後の結論にご反論があるようでしたら、逆に危険性を証明していただきたい。そのことによって明確になるのではないかと思います。

○竹内専門委員 今、日建設計から、法令を遵守して、問題はないというお話をいただきましたが、そこに関しては、高野さんとして、今、一言おありであればおっしゃっていただきたいと思います。

○富樫氏 我々としては、構造設計がいろいろな観点からチェックする必要があるものであることは十分にわかっているつもりです。ですので、様々なご専門家がいろいろなお考えをお持ちになられて、こういう検討をしたか、こういう観点からは大丈夫かというご疑問を持たれることはよくわかります。それにお答えすることは全くやぶさかではありません。
 ただ、今この市場に求められているのは、法律的な安全性、ここをこれからお使いいただく市場のエンドユーザーの方々が安心して使えるかどうか、この一点だと思っていますので、最低限、法律に基づいてこの建物ができているのかどうかだけは、本日ここで合意しておきたいと思います。

○竹内専門委員 それはよろしいですか。

○高野氏 はい。ただ、1点確認します。申請時の境界条件と現状の境界条件が違うことは、それでよろしいですね。要は、基礎梁の中心レベルでの拘束はないと判断されていますから。

○常木氏 いえ、それも変わっていません。地下の地震力は、周辺を拘束しているから震度0.1と言っているわけではなく、地下の深さに応じて震度をさらに減らしていく場合はそうですが、0.1自体は基本的には地下の拘束条件を期待しているわけではありません。

○森高専門委員 すみません、それは議論が繰り返しになってしまうので。

○高野氏 構造の階高の取り方も変わってきますよ。動く床、動かない床で、それは全然違うと思います。

○竹内専門委員 そこもそうですが、大変申し訳ありませんが、森高さんのほうで、日建設計の説明に対して、法律的にどう判断できるかという構造家の方としてのご意見を言わせていただいていいですか。

○高野氏 はい、どうぞ。

○竹内専門委員 その上で、ある疑問点があって、そこは専門家同士での検討を行うということで、まずは、森高専門委員、本日の説明のことに対してどう判断されるか、一言コメントをお願いします。

○森高専門委員 もともとの構造設計のモデル化の思想は聞きました。高野さんが指摘されている、フーチングが突出している影響はどうだという話も、補足的にモーダルアナリシスでチェックされて、上についての地震力は変わらないという検討をされていることは、確認申請書ではなくて、わざわざここで議論するために検討されたと認識しています。
 繰り返しになりますが、日建設計は設計の責任を負う立場で安全性を宣言されており、私も別に問題はない、同意します。

○富樫氏 ありがとうございました。

○小島座長 本日は、論点1、論点2、論点3、そして、今の法律的な判断のお話は別にして、専門的な議論についてもう少し整理することが残っています。この議論を、専門家の議論としての整理と、わかりやすく述べるということで、まとまった段階で、このプロジェクトチームで説明の機会を設けたいと思います。
 次回は、最初にたくさんの検討項目を掲げましたが、次回は、施設の機能・安全性についてです。今日、少しご質問もありましたが、どういう設定条件で市場を設計して、実際にいろいろな業者が工事をされたのか。業者さんからは、例えば入り口の入ってきたところがヘアピンカーブになっていて、大きなトラックが切り返しなしで本当に曲がれるのか。高速道路を一台で走る分には何の問題もないわけですが、市場はたくさんのトラックが入るので、多くのトラックが入り、多くのトラックが出発する場合、市場機能として、この設備は大丈夫なのか。あるいは、仲卸、卸もそうですが、スロープがあって、スロープの曲がるところも若干ヘアピンぎみになっている。あるいは、当初の設計にはなかったけれども、途中で設計変更して付け足したスロープもあります。これもヘアピンになっている。せっかく建てていただいたけれども、きちんと機能するのか。たくさんのターレが走ったり、トラックが走ったりした場合に大丈夫かなど。
 これらは一例ですが、そういう施設の機能・安全性の観点、排水能力など、そういう一つ一つの事柄で、その中から特に業者さんたちが心配されている事柄を取り上げて議論したいと思います。
 先ほど、日建設計なのか大建設計なのかというところは、こういう問題にかかわってきていますので、次回のテーマを設定した段階でまたお聞きしなければならないことがあるかもしれませんが、その際はよろしくお願いします。
 では、本日の第2回市場問題プロジェクトチーム会議は、これで終わりたいと思います。
 どうもありがとうございました。


午後6時19分閉会

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